「カウボーイ人形のウッディ」と「スペース・レンジャーのバズ・ライトイヤー」。この二人の名前を聞いて、胸が熱くならない映画ファンはいないだろう。
1995年(日本公開は1996年)、世界初の長編フルCGアニメーション映画として登場した『トイ・ストーリー』は、映像革命と呼ぶにふさわしい衝撃を世界に与えた。しかし、このシリーズが真に伝説となった理由は、技術の目新しさではない。「おもちゃがいきている」という夢のような世界観の中で描かれる、普遍的な友情、嫉妬、そして持ち主の成長に伴う「別れ」と「自立」の物語が、世代を超えて観客の心を鷲掴みにしたからだ。
子供部屋の小さなおもちゃたちが繰り広げる、映画史に残る壮大な冒険の軌跡を振り返ろう。「無限の彼方へ、さあ行くぞ!」
シリーズデータ
『トイ・ストーリー』は、ディズニー&ピクサーによるCGアニメーション映画シリーズ。監督はジョン・ラセター(第1・2作)。
当時、手描きアニメーションが主流だった時代に「コンピューターですべてを作る」という無謀とも言える挑戦から始まった。第1作の世界的成功により、ピクサーはアニメーション界のトップランナーへと躍り出る。おもちゃたちの視点から「人間との絆」を描くコンセプトは一貫しているが、シリーズを重ねるごとにテーマは深まり、大人こそが泣けるエンターテインメントとして進化を続けている。
歴代作品一覧
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※No.1、2は配給収入、No.3以降は興行収入で記載。
| No | 公開日(日本) | タイトル | 興行収入 |
|---|---|---|---|
| 1 | 1996/3/23 | トイ・ストーリー | 30.0億円 |
| 2 | 2000/3/11 | トイ・ストーリー2 | 34.5億円 |
| 3 | 2010/7/10 | トイ・ストーリー3 | 108.0億円 |
| 4 | 2019/7/12 | トイ・ストーリー4 | 100.9億円 |
| 番外 | 2022/7/1 | バズ・ライトイヤー | 11.8億円 |
フェーズ1:アニメーション革命と黄金コンビの誕生(1996-2000)
記念すべき第1作と、その続編となる初期2作品。「CGアニメなんて冷たくて感情移入できない」という当時の懐疑的な見方を、圧倒的な脚本力とキャラクターの魅力で覆した革命的な時期である。
カウボーイ人形のウッディと、最新鋭のアクションフィギュア・バズ。相反する二人が衝突しながらも「アンディの家へ帰る」という共通の目的のために最高の相棒(バディ)になっていく過程は、バディ・ムービーの王道にして最高峰。日本での公開時も、唐沢寿明(ウッディ)と所ジョージ(バズ)による吹き替えが見事にハマり、洋画アニメとしては異例のヒットを記録した。
No.1 トイ・ストーリー
| 公開日(日本) | 1996年3月23日(土) |
|---|---|
| 配給収入 | 30.0億円 |
| 監督 | ジョン・ラセター |
| 脚本 | ジョス・ウェドン ほか |
| 主題歌 | ランディ・ニューマン「君はともだち」 |
| メイン声優(日) | ウッディ(唐沢寿明)、バズ(所ジョージ)、ハム(大塚周夫)、レックス(三ツ矢雄二)、ポテトヘッド(名古屋章)、スリンキー(永井一郎)、ボー・ピープ(戸田恵子) |
| ゲスト声優(日) | アンディ(市村浩佑)、シド(堀裕晶) |
【概要】
世界初の長編フルCGアニメーション映画。アンディ少年の部屋で暮らすおもちゃたちのリーダー・ウッディと、新しくやってきた最新式のおもちゃ・バズ・ライトイヤーの対立と友情を描く。自分を本物のスペース・レンジャーだと信じているバズと、彼に嫉妬するウッディ。おもちゃ殺し少年・シドの家からの決死の脱出劇はスリル満点。
【あらすじ】
カウボーイ人形のウッディは、持ち主のアンディ少年の大のお気に入り。しかし、誕生日に最新式のアクションフィギュア、バズ・ライトイヤーがやってきて主役の座を奪われてしまう。バズをライバル視するウッディは、ある日誤ってバズを窓から落としてしまう。仲間から見放されたウッディはバズを連れ戻しに行くが、二人は隣に住む「おもちゃ殺し」の少年シドに捕まってしまう。
日本公開は1996年。「アムラー」が流行語になり、安室奈美恵ファッションが街を席巻した年。アニメ界では『新世紀エヴァンゲリオン』のブームが社会現象化していた。ゲーム業界では『ポケットモンスター 赤・緑』が発売され、後に世界的ブームとなる。そんな中、全く新しい映像体験として登場した『トイ・ストーリー』は、子供だけでなく大人たちにも衝撃を与え、CGアニメ時代の幕開けを告げた。
No.2 トイ・ストーリー2
| 公開日(日本) | 2000年3月11日(土) |
|---|---|
| 配給収入 | 34.5億円 |
| 監督 | ジョン・ラセター |
| 脚本 | アンドリュー・スタントン ほか |
| 主題歌 | サラ・マクラクラン「ホエン・シー・ラヴド・ミー」 |
| メイン声優(日) | ウッディ(唐沢寿明)、バズ(所ジョージ)、ジェシー(日下由美)、プロスペクター(小林修)、ハム(大塚周夫)、レックス(三ツ矢雄二) |
| ゲスト声優(日) | アル(樋浦勉)、ザーグ(佐々木梅治) |
【概要】
ウッディが実はお宝鑑定団も驚く「プレミア人形」だったことが判明する第2作。おもちゃ屋のアルに誘拐されたウッディを救うため、バズたちが街へ繰り出す。「博物館で永遠に保存されること」と「子供に遊んでもらっていつか壊れること」、おもちゃとしての幸せはどちらにあるのかという深いテーマを突きつける。
【あらすじ】
ガレージセールで壊れたペンギン人形を助けようとしたウッディが、おもちゃコレクターのアルに誘拐されてしまう。アルのマンションで、ウッディは自分がかつて人気テレビ番組の主人公だったことを知る。カウガール人形のジェシーや馬のブルズアイと出会い、日本の博物館へ行くことを勧められるウッディ。一方、バズたちはウッディ救出のため、危険な道路を横断しておもちゃ屋を目指す。
フェーズ2:完璧な結末と新たな旅立ち(2010-2019)
前作から10年の時を経て公開された『トイ・ストーリー3』は、持ち主アンディの大学進学という「おもちゃにとっての最大の転機」を描き、世界中を涙の渦に巻き込んだ。興行収入100億円を突破し、アカデミー賞長編アニメーション賞も受賞。「完璧な完結編」と称賛された。
しかし、ピクサーはそこで終わらせなかった。さらに9年後、『トイ・ストーリー4』でウッディの「その後」を描く新たな挑戦を行う。賛否両論を巻き起こしながらも、おもちゃとしての「役割」から解き放たれ、一人の存在として生きる道を選んだウッディの決断は、シリーズに新たな深みを与えた。
No.3 トイ・ストーリー3
| 公開日(日本) | 2010年7月10日(土) |
|---|---|
| 興行収入 | 108.0億円 |
| 監督 | リー・アンクリッチ |
| 脚本 | マイケル・アーント |
| 主題歌 | ランディ・ニューマン「僕らはずっとトモダチ」 |
| メイン声優(日) | ウッディ(唐沢寿明)、バズ(所ジョージ)、ジェシー(松田弘子)、ハム(大塚周夫)、レックス(三ツ矢雄二)、ケン(東地宏樹)、バービー(高橋理恵子) |
| ゲスト声優(日) | ロッツォ・ハグベア(勝部演之)、ビッグ・ベビー(末原一乃)、ボニー(諸星すみれ) |
【概要】
アンディが大学へ進学するため、おもちゃたちとの別れが迫る。手違いで保育園「サニーサイド」に寄付されてしまったウッディたち。そこはピンクの熊のぬいぐるみ・ロッツォが支配する恐怖の独裁国家だった。脱出劇のスリルと、持ち主との別れという避けられない運命。「完璧なフィナーレ」として映画史に刻まれた感動作。
【あらすじ】
17歳になったアンディは、ウッディだけを大学へ連れて行き、他のおもちゃは屋根裏部屋へしまうつもりだった。しかし手違いで、バズたちは保育園へ寄付されてしまう。乱暴な幼児たちにもみくちゃにされる仲間を救うため、ウッディも保育園へ。しかし、そこを取り仕切るロッツォは、人間に捨てられた過去を持つ冷酷な支配者だった。ゴミ処理場の焼却炉が迫る絶体絶命のピンチ。彼らが最後に選んだ「帰る場所」とは。
AKB48が「ヘビーローテーション」などを大ヒットさせ、アイドルブームが頂点に達した年。映画界ではジブリの『借りぐらしのアリエッティ』や『アバター』(前年公開)が話題に。iPhone 4が発売され、スマートフォンが本格的に普及し始めた時期でもある。3D映画ブームの中で公開された『トイ・ストーリー3』は、そのクオリティの高さで「3Dで観るべき映画」として絶賛された。
No.4 トイ・ストーリー4
| 公開日(日本) | 2019年7月12日(金) |
|---|---|
| 興行収入 | 100.9億円 |
| 監督 | ジョシュ・クーリー |
| 脚本 | アンドリュー・スタントン ほか |
| 主題歌 | ランディ・ニューマン「君のため」 |
| メイン声優(日) | ウッディ(唐沢寿明)、バズ(所ジョージ)、ボー・ピープ(戸田恵子)、フォーキー(竜星涼)、ジェシー(松田弘子)、デューク・カブーン(森川智之) |
| ゲスト声優(日) | ギャビー・ギャビー(新木優子)、ダッキー(チョコレートプラネット・松尾駿)、バニー(チョコレートプラネット・長田庄平) |
【概要】
新たな持ち主ボニーの元で暮らすウッディ。しかし、ボニーが作ったおもちゃ「フォーキー」は自分のことをゴミだと思い込み逃げ出してしまう。彼を連れ戻す旅の途中で、かつての仲間ボー・ピープと再会。彼女は「持ち主のいない自由なおもちゃ」として逞しく生きていた。ウッディが自分の生き方を見つめ直し、衝撃の決断を下す問題作にして意欲作。
【あらすじ】
ボニーが幼稚園で作った先割れスプーンのおもちゃ・フォーキー。「僕はおもちゃじゃない、ゴミだ!」と逃げ出した彼を追って、ウッディは旅に出る。たどり着いたアンティークショップで、ウッディはかつて離れ離れになったボー・ピープと運命の再会を果たす。外の世界で自由に生きるボーの姿に、ウッディの心は揺れ動く。一方、ショップの人形ギャビー・ギャビーは、ウッディのボイスボックスを狙っていた。
No.5(番外編) バズ・ライトイヤー
| 公開日(日本) | 2022年7月1日(金) |
|---|---|
| 興行収入 | 11.8億円 |
| 監督 | アンガス・マクレーン |
| 脚本 | ジェイソン・ヘッドリー ほか |
| メイン声優(日) | バズ・ライトイヤー(鈴木亮平)、イジー(今田美桜)、ソックス(山内健司/かまいたち) |
【概要】
「アンディが少年時代に観て、バズのおもちゃを欲しがるきっかけになった映画」という設定のSFアクション。おもちゃのバズではなく、そのモデルとなった人間のスペース・レンジャー、バズ・ライトイヤーの冒険を描く。リアルなSF描写や、相棒の猫型ロボット・ソックスの可愛らしさが話題に。
【あらすじ】
有能なスペース・レンジャーのバズは、自分のミスで1200人の乗組員と共に危険な惑星に不時着してしまう。全員を地球に帰すため、危険なハイパー航行のテストパイロットに志願するバズ。しかし、テストのたびに数分のフライトが数年の時間を奪い、友人は年老いていく。62年後、帰還したバズを待っていたのは、エイリアン・ザーグに支配された世界だった。
まとめ:おもちゃたちの魂は永遠に
1995年の衝撃的なデビューから四半世紀以上。アンディと共に成長し、ボニーの元へ、そしてもっと広い世界へと旅立ったウッディたち。技術がいかに進化しても、変わらないのは「誰かのためにありたい」というおもちゃたちの純粋な心だ。2026年には『トイ・ストーリー5』の公開も予定されている。彼らの冒険は、まだ終わらない。




