1992年、ゲームボーイという白黒の画面で産声を上げた『星のカービィ』。開発したのは、当時経営難に喘いでいたHAL研究所と、当時22歳の若き天才クリエイター・桜井政博だ。「初心者でもクリアできるアクションゲーム」というコンセプトは、高難易度化が進んでいた当時のゲーム業界に一石を投じ、瞬く間に世界中の子供たちを虜にした。
その後、敵を吸い込んで能力をコピーするシステムを確立し、2Dから3Dへ、そしてオープンワールドライクな冒険へと進化を遂げた。ゲームだけに留まらず、「カービィカフェ」やオーケストラコンサートなど、キャラクターIPとしても巨大な存在感を示すカービィ。
本記事では、リメイク作を除くナンバリング本編全13作品を通じて、その「優しくて奥深い」歴史を紐解いていく。
シリーズ基礎データ
『星のカービィ』(Kirby)は、HAL研究所が開発し、任天堂から発売されているアクションゲームシリーズ。第1作は1992年発売。生みの親は桜井政博。プロデューサーには後に任天堂社長となる岩田聡も名を連ねていた。敵を吸い込んで吐き出す、あるいは飲み込んで能力をコピーするアクションが特徴。
シリーズ全世界累計販売本数は2024年時点で5,000万本を超えている。その愛らしいキャラクター性からグッズ展開も盛んで、男女問わず幅広い層から愛され続けている。
歴代シリーズ作品一覧
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※売上は世界累計、または特記なき場合国内出荷・DL数の概算データ(リメイク版を含まないオリジナル版の数値)を参照。
| No | 発売日 | タイトル | 売上本数 |
|---|---|---|---|
| 1 | 1992/4/27 | 星のカービィ | 513万本(世界) |
| 2 | 1993/3/23 | 星のカービィ 夢の泉の物語 | 175万本(世界) |
| 3 | 1995/3/21 | 星のカービィ2 | 236万本(世界) |
| 4 | 1996/3/21 | 星のカービィ スーパーデラックス | 110万本(国内) |
| 5 | 1998/3/27 | 星のカービィ3 | 36万本(国内) |
| 6 | 2000/3/24 | 星のカービィ64 | 107万本(国内) |
| 7 | 2004/4/15 | 星のカービィ 鏡の大迷宮 | 147万本(世界) |
| 8 | 2006/11/2 | 星のカービィ 参上! ドロッチェ団 | 227万本(世界) |
| 9 | 2011/10/27 | 星のカービィ Wii | 131万本(世界) |
| 10 | 2014/1/11 | 星のカービィ トリプルデラックス | 178万本(世界) |
| 11 | 2016/4/28 | 星のカービィ ロボボプラネット | 132万本(世界) |
| 12 | 2018/3/16 | 星のカービィ スターアライズ | 438万本(世界) |
| 13 | 2022/3/25 | 星のカービィ ディスカバリー | 612万本(世界) |
第1期:初心者への優しさとコピー能力の確立(1992-1998)
1990年代初頭、ゲーム業界は『ストリートファイターII』による格闘ゲームブームや、高難易度のアクションゲームが持て囃される風潮にあった。そんな中で「誰でもクリアできるアクションゲーム」を標榜して現れたのが『星のカービィ』である。
ゲームボーイで産声を上げた第1作は、空を飛べるという斬新なシステムで落下ミスのストレスを軽減。続くファミコン版『夢の泉の物語』では、今や代名詞となった「コピー能力」を実装し、シリーズの基礎を確立した。スーパーファミコン時代に入ると『スーパーデラックス』で2人同時プレイを実現し、アクションゲームの幅を大きく広げた。
ライバルであるマリオやソニックがスピードやアスレチック性を追求する中、カービィは「間口の広さ」と「奥深さ」の両立という独自のポジションを築き上げた。
No.1 星のカービィ

| 発売日 | 1992年4月27日 |
|---|---|
| 開発 | HAL研究所 |
| 発売 | 任天堂 |
| 売上本数 | 513万本(世界) |
| 対応ハード | ゲームボーイ |
| プロデューサー | 岩田聡 / 宮本茂 / 清水誠 |
| ディレクター | 桜井政博 |
| デザイナー | 桜井政博 |
| サウンド | 石川淳 |
【概要】
記念すべきシリーズ第1作。当時はまだコピー能力がなく、「吸い込み」「吐き出し」「ホバリング」という基本アクションのみで構成されていた。容量の少ないゲームボーイソフトでありながら、キャラクターの豊かなアニメーションや、覚えやすいBGMが高く評価された。発売時のTVCMでは「きらきらきっず」というキャッチコピーと共に、絵描き歌が披露され、子供たちの間で大流行した。ファミ通クロスレビューでは22点(40点満点)と決して高くはなかったが、口コミで人気が広がり世界で500万本以上の大ヒットとなった。
【あらすじ】
プププランドの住民たちは、呆れるほど平和な日々を送っていた。しかしある夜、食いしん坊のデデデ大王と手下たちが現れ、国中の食べ物と、空に輝く秘宝「きらきらぼし」を奪い去ってしまう。食べ物を失い悲しむ住民たちのため、春風と共に現れた旅の若者カービィが立ち上がる。
「グリーングリーンズ」の森を抜け、「キャッスルロロロ」の城へ。道中で襲い来るウィスピーウッズやクラッコといった個性的なボスを倒し、デデデ大王の城「マウント・デデデ」を目指す。プロレス技を繰り出すデデデ大王との一騎打ちを制し、奪われたきらきらぼしを取り戻して、気球のように体を膨らませて城を運び去るラストは、平和の象徴として語り継がれている。
1992年は、スーパーファミコンで『ストリートファイターII』が発売され、空前の格闘ゲームブームが巻き起こっていた年である。ゲームセンターも家庭用も「対戦」に熱中し、操作が複雑化・高難易度化していく中で、ゲームボーイという携帯機で「誰もがクリアできる優しさ」を提示した『星のカービィ』は、ゲーム疲れした層や、まだ難しい操作ができない子供たちにとってのオアシスとなった。また、アニメ『美少女戦士セーラームーン』の放送開始や、バルセロナ五輪での岩崎恭子選手の金メダルなど、明るい話題が多かった年でもある。
No.2 星のカービィ 夢の泉の物語

| 発売日 | 1993年3月23日 |
|---|---|
| 開発 | HAL研究所 |
| 発売 | 任天堂 |
| 売上本数 | 175万本(世界) |
| 対応ハード | ファミリーコンピュータ |
| プロデューサー | 岩田聡 / 宮本茂 |
| ディレクター | 桜井政博 |
| デザイナー | 桜井政博 他 |
| サウンド | 安藤浩和 / 石川淳 |
【概要】
シリーズ初の据え置き機(ファミコン)向けタイトルであり、**「敵を吸い込んで能力をコピーする」**システムが初めて搭載された歴史的作品。ファミコン末期の発売ながら、6メガビットという大容量ROMを使用し、回転拡大縮小などの高度な演出を実現した。隠しスイッチやミニゲームなどの遊び要素も満載で、ファミ通クロスレビューでは33点(ゴールド殿堂)を獲得。「初心者向け」というコンセプトを維持しつつ、上級者も楽しめる奥深さを加えた傑作。
【あらすじ】
プププランドの住民たちが、夜になっても夢を見られなくなってしまった。原因は、夢の泉にある平和の象徴「スターロッド」をデデデ大王が奪い、7つに割って手下たちに配ってしまったからだ。カービィは夢を取り戻すため、スターロッドの欠片を集める冒険の旅に出る。
ウィスピーウッズやメタナイトら強敵を倒し、ついにスターロッドを完成させて泉に戻すカービィ。しかし、デデデ大王がスターロッドを隠したのには、意外な理由があった。泉から溢れ出したのは、人々に悪夢を見せる真の黒幕「ナイトメア」。大王は彼を封印するためにスターロッドを隠していたのだ。カービィとデデデが共闘し、夢の世界を守るために宇宙へと飛び立つ最終決戦が始まる。
No.3 星のカービィ2

| 発売日 | 1995年3月21日 |
|---|---|
| 開発 | HAL研究所 |
| 発売 | 任天堂 |
| 売上本数 | 236万本(世界) |
| 対応ハード | ゲームボーイ |
| プロデューサー | 岩田聡 / 宮本茂 |
| ディレクター | 下村真一 |
| サウンド | 安藤浩和 / 池上正 |
【概要】
再び舞台をゲームボーイに移した正統続編。新たに3匹の仲間(ハムスターのリック、マンボウのカイン、フクロウのクー)が登場し、カービィと合体することでコピー能力が変化するシステムが好評を博した。スーパーゲームボーイに対応しており、専用のカラー枠で遊ぶことができた。7つの島に隠された「虹のしずく」を全て集めないと真のラスボスと戦えないという、やり込み要素も充実。この頃から、カービィの世界観に「ダークマター」という不気味な敵対勢力が関わり始める。
【あらすじ】
プププランドにかかる虹の橋が、突如として消えてしまった。同時にデデデ大王がまたしてもおかしくなり、国中を荒らし始める。カービィは3匹の仲間と共に、虹のしずくを集めて橋を修復する旅に出る。リック、カイン、クーの背に乗り、陸海空を駆け巡る冒険。
しかし、デデデ大王の変貌の裏には、世界を闇で覆おうとする暗黒の存在「ダークマター」が憑依していた。虹のしずくを集めて完成させた「虹の剣」を手にしたカービィは、大王から抜け出し宇宙へ逃げたダークマターを追い、暗黒の雲の中へと突入する。
No.4 星のカービィ スーパーデラックス

| 発売日 | 1996年3月21日 |
|---|---|
| 開発 | HAL研究所 |
| 発売 | 任天堂 |
| 売上本数 | 110万本(国内) |
| 対応ハード | スーパーファミコン |
| プロデューサー | 岩田聡 / 宮本茂 |
| ディレクター | 桜井政博 |
| サウンド | 石川淳 / 宮川弾 |
【概要】
「オムニバス形式」を採用したシリーズ屈指の名作。「白き翼ダイナブレイド」「激突!グルメレース」「洞窟大作戦」など、遊び方の異なる複数のゲームが収録されている。コピー能力から「ヘルパー」を生み出すことで2人同時プレイが可能になり、兄弟や友達と遊べるゲームとして絶大な人気を誇った。ファミ通クロスレビューでは32点。セーブデータが消えやすいことでも有名で、「0% 0% 0%」の表示に絶望したプレイヤーは数知れない。多彩なコマンド入力による技の分岐も導入され、後のスマブラにも影響を与えた。
【あらすじ】
(オムニバス形式のため複数存在)プププランドの作物を奪ったデデデ大王を懲らしめる入門編「はるかぜとともに」、畑を荒らす巨鳥を倒しに行く「白き翼ダイナブレイド」、お宝を求めて地底を探索する探索アクション「洞窟大作戦」、デデデ大王と食べ物を賭けて競走する「激突!グルメレース」、戦艦ハルバードによるプププランド制圧を阻止する「メタナイトの逆襲」、太陽と月が喧嘩した原因を探る「銀河にねがいを」など、コミカルからシリアスまで多彩な物語が展開される。全てのモードをクリアした先に待つ「格闘王への道」では、道化師マルクの狂気が明らかになる。
No.5 星のカービィ3

| 発売日 | 1998年3月27日 |
|---|---|
| 開発 | HAL研究所 |
| 発売 | 任天堂 |
| 売上本数 | 36万本(国内) |
| 対応ハード | スーパーファミコン |
| プロデューサー | 岩田聡 / 宮本茂 |
| ディレクター | 下村真一 |
| サウンド | 石川淳 |
【概要】
『カービィ2』の正統続編。パステルカラーの優しい手書き風グラフィックが特徴。SFC末期の発売(NINTENDO64発売から約1年半後)だったため売上本数は控えめだが、根強いファンを持つ隠れた名作。新たにナゴ、チュチュ、ピッチの3匹が仲間に加わり、グーイを操作しての2人プレイも可能になった。見た目の可愛らしさに反して、ラスボスの「ゼロ」の描写が非常にグロテスクでトラウマ級であることや、特定の条件を満たさないと真のエンディングが見られないシビアさも併せ持つ。
【あらすじ】
ポップスターに再び黒い雲「ダークマター」が覆いかぶさった。デデデ大王や仲間たちも洗脳され、世界は不穏な空気に包まれる。カービィは相棒のグーイ(実はダークマター族だが悪い心を持たない)や、6匹の仲間たちと協力して、ポップスターの平和を取り戻す旅に出る。
各ステージの困っている人を助けることで得られる「ハートスター」を全て集め、それらを組み合わせて「ラブラブステッキ」を完成させなければならない。愛の力でダークマターを退け、その親玉である純白の悪魔「ゼロ」との最終決戦に挑む。
第2期:模索と実験の「空白」期間(2000-2009)
2000年代に入り、ゲーム業界はPlayStation 2の圧倒的な支配下にあった。NINTENDO64やニンテンドーゲームキューブで苦戦する任天堂と同様、カービィシリーズもまた、大きな転換期を迎えていた。
生みの親である桜井政博氏がHAL研究所を退社し、シリーズの舵取りが難航。開発中止になった幻の作品(通称『箱庭カービィ』など)が複数存在し、メインストリームの据え置き機での新作が長らく出ない「冬の時代」でもあった。
しかし、携帯機(GBA、DS)では『鏡の大迷宮』や『ドロッチェ団』といった意欲作がリリースされ、フラグシップ(カプコンの子会社)など外部開発との連携も模索された。アニメ版『星のカービィ』の放送などメディアミックスは活発で、キャラクターとしての人気は不動のものとなっていった。
No.6 星のカービィ64

| 発売日 | 2000年3月24日 |
|---|---|
| 開発 | HAL研究所 |
| 発売 | 任天堂 |
| 売上本数 | 107万本(国内) |
| 対応ハード | NINTENDO64 |
| プロデューサー | 岩田聡 / 宮本茂 |
| ディレクター | 下村真一 |
| サウンド | 石川淳 / 安藤浩和 |
【概要】
シリーズ初の3Dグラフィック作品(ゲーム性は2.5Dアクション)。2つの能力を掛け合わせる「コピー能力ミックス」が最大の特徴。バーニング×カッターで炎の剣、スパーク×アイスで冷蔵庫(食べ物を出して回復)など、多彩な組み合わせ探しがプレイヤーを熱中させた。ファミ通クロスレビューは32点。CMでは「仲間っていいな」というキャッチコピーと共に、カービィたちがピクニックをする微笑ましい映像が流れたが、ゲーム内では妖精リボンやデデデ大王たちとのロードムービー的な冒険が描かれる。ホバリングに制限があるなど、アクション性はややシビア。
【あらすじ】
妖精たちの星「リップルスター」が黒い雲(ダークマター)に襲われた。妖精のリボンは宝物であるクリスタルを持って脱出するが、追撃を受けてクリスタルは砕け散り、様々な星へ散らばってしまった。
ポップスターに落ちてきたリボンを助けたカービィは、ワドルディ、アデレーヌ、デデデ大王を仲間に加え、クリスタルを集めてリップルスターを救うため、星々を巡る宇宙の旅に出る。ラスボス「02(ゼロツー)」の天使のような姿から流血する衝撃的なビジュアルと、悲壮感漂うBGMは、トラウマとして名高い。
2000年3月4日、ソニーから『PlayStation 2』が発売され、ゲーム業界はDVD再生機能も備えた黒船の到来に沸き立っていた。『星のカービィ64』はそのわずか20日後に発売され、NINTENDO64末期を支えるタイトルとなった。同時期には『遊戯王』や『ポケモン金銀』のアニメが大ヒットしており、子供たちの関心は多岐にわたっていた。カービィシリーズもアニメ化(2001年)など、ゲーム以外のメディア展開で存在感を示し始めた時期である。
No.7 星のカービィ 鏡の大迷宮

| 発売日 | 2004年4月15日 |
|---|---|
| 開発 | HAL研究所 / フラグシップ / ディンプス |
| 発売 | 任天堂 |
| 売上本数 | 147万本(世界) |
| 対応ハード | ゲームボーイアドバンス |
| プロデューサー | 谷村正仁 / ソフト部開発チーム |
| ディレクター | 足立智康 |
| サウンド | 稲垣博司 / 石川淳 |
【概要】
「4人のカービィ」が協力して広大な迷宮を探索する探索型アクション。ステージクリア型ではなく、全てのエリアが繋がっている「メトロイドヴァニア」的なマップ構成が特徴。開発にはカプコンの子会社だったフラグシップが参加しており、これまでとは一味違うスタイリッシュな雰囲気が漂う。携帯を使って仲間を呼ぶ通信要素や、メタナイトにスポットを当てたストーリーが人気。ファミ通クロスレビューは36点(プラチナ殿堂)。難易度はやや高めだが、自由度の高さが評価されている。
【あらすじ】
プププランドの上空にある、願いを叶える「鏡の国」で異変が発生。メタナイトが調査に向かうが、鏡の国の暴走した影「ダークメタナイト」に敗れ、鏡の中に閉じ込められてしまう。駆けつけたカービィもダークメタナイトに斬りつけられ、4人の色違いカービィに分裂させられてしまう。
4人のカービィは協力(時には単独行動)し、世界中に散らばった鏡の欠片を集め、鏡の国を救うために迷宮へと挑む。ラスボス「ダークマインド」との連戦は、シリーズ屈指の長期戦となる。
No.8 星のカービィ 参上! ドロッチェ団

| 発売日 | 2006年11月2日 |
|---|---|
| 開発 | HAL研究所 / フラグシップ |
| 発売 | 任天堂 |
| 売上本数 | 227万本(世界) |
| 対応ハード | ニンテンドーDS |
| プロデューサー | 谷村正仁 / 灯山隆敏 |
| ディレクター | 足立智康 |
| サウンド | 石川淳 他 |
【概要】
ニンテンドーDSで発売された正統派アクション。下画面(コピーパレット)でアイテムや能力をストック・合成できるシステムが特徴。ネズミの盗賊団「ドロッチェ団」とお宝を奪い合うスピーディな展開が楽しめる。難易度は低めで、子供向けの雑誌『コロコロコミック』等でも「ドロッチェ団」のキャラクターが大きく取り上げられた。開発は前作に続きフラグシップが担当したが、本作発売後にフラグシップは解散。HAL研単独開発へ戻る前の過渡期の作品であるが、タッチペンを使った手軽な操作感はDS世代の子供たちに支持された。
【あらすじ】
ある日の午後、カービィがおやつの大好物「イチゴのショートケーキ」を食べようとした瞬間、何者かにケーキが奪われてしまった! 犯人は噂のネズミ盗賊「ドロッチェ団」だと確信したカービィは、ケーキを取り戻すために彼らを追いかける。道中で手に入る宝箱を巡って、団長のドロッチェや手下たちとの争奪戦が繰り広げられる。
しかし、ドロッチェ団が狙っていた真のお宝である「アーク」には、かつて封印された暗黒の支配者「ダークゼロ」の秘密が隠されていた。ケーキへの執念が世界を救うことになる、食いしん坊カービィの本領発揮。
第3期:熊崎カービィ体制と多人数プレイの復活(2011-2018)
長らく据え置き機での本編新作が途絶えていたカービィシリーズだが、2011年の『星のカービィ Wii』でついに復活を遂げる。この時期から、熊崎信也氏がゼネラルディレクターとしてシリーズを統括するようになり、過去作の設定を統合した奥深い「裏設定(ロア)」や、壮大なファンサービスが充実し始めた。
ハードはWii Uが苦戦する一方で、携帯機であるニンテンドー3DSが市場を牽引。『トリプルデラックス』や『ロボボプラネット』などの良作が3DSで連発され、シリーズの評価を盤石なものにした。
また、Nintendo Switchの登場により、据え置きと携帯の垣根がなくなり、『スターアライズ』では『スーパーデラックス』以来となる「4人協力プレイ」がメインコンセプトとして復活。過去作のキャラクターが「ドリームフレンズ」として集結し、オールスターのお祭り感を作り出した。
No.9 星のカービィ Wii

| 発売日 | 2011年10月27日 |
|---|---|
| 開発 | HAL研究所 |
| 発売 | 任天堂 |
| 売上本数 | 131万本(世界) |
| 対応ハード | Wii |
| プロデューサー | 河本浩一 / 中崎泰明 / 隅江賢 |
| ディレクター | 熊崎信也 |
| サウンド | 石川淳 / 安藤浩和 |
【概要】
『64』以来、実に11年ぶりとなる据え置き機での本編アクション。開発中止になった3つのプロジェクトの要素を統合し、原点回帰かつ王道のカービィとして完成した。4人同時プレイが可能で、ド派手な「スーパー能力」が爽快。ファミ通クロスレビューは36点(プラチナ殿堂)。難産だった開発経緯は「社長が訊く」でも語られ、話題となった。新キャラ「マホロア」は、その愛らしい見た目と、物語後半での衝撃的な展開から、瞬く間に人気キャラの仲間入りを果たし、後の作品でも重要なポジションを担うことになる。
【あらすじ】
ある日、プププランドに宇宙船「ローア」が不時着し、パーツが飛び散ってバラバラになってしまった。乗っていた異星人マホロアを助けるため、カービィたちは散らばった船のパーツ(エナジースフィア)を集める冒険に出る。今回はデデデ大王、メタナイト、ワドルディも協力し、4人で船を修理する。
修理が完了し、お礼としてマホロアの故郷「ハルカンドラ」へ招待されるカービィたちだったが、そこで待ち受けていたのは、伝説のドラゴン「ランディア」との戦いと、マホロアが隠していた「全宇宙を支配する」という真の目的だった。無限の力を得る「マスタークラウン」を巡る悲しき戦いが幕を開ける。
2011年は東日本大震災が発生し、日本中が自粛ムードと復興への願いに包まれた年である。エンタメ業界も「絆」や「繋がり」をテーマにした作品が多く求められた。ゲーム市場では、ニンテンドー3DSが発売されたもののスタートダッシュに苦戦し、一方でスマートフォンの普及により『パズル&ドラゴンズ』(翌2012年)などの前夜としてソーシャルゲームが急速に台頭し始めていた。そんな中、家族や友達と顔を合わせて遊べる『星のカービィ Wii』は、安心できる定番ブランドとしてファミリー層に温かく迎え入れられた。
No.10 星のカービィ トリプルデラックス
| 発売日 | 2014年1月11日 |
|---|---|
| 開発 | HAL研究所 |
| 発売 | 任天堂 |
| 売上本数 | 178万本(世界) |
| 対応ハード | ニンテンドー3DS |
| プロデューサー | 河本浩一 / 中崎泰明 / 隅江賢 |
| ディレクター | 熊崎信也 |
| サウンド | 石川淳 / 安藤浩和 |
【概要】
3DSの立体視機能を活かし、「手前」と「奥」を行き来するアクションが特徴。タイトルには「3D(トリプルデラックス)」の意味も込められている。新能力「ビッグバン」による吸い込みアクションは画面を圧倒する迫力。また、サブゲームの「カービィファイターズ」や「大王のデデデでデン」も作り込まれており、後に単体ソフトとして配信された。ストーリー面では、敵対する「タランザ」や「セクトニア」の悲しい背景設定が、ポーズ画面の説明文(フレーバーテキスト)で語られるようになり、ここからシリーズ特有の「重厚な裏設定」が定着した。
【あらすじ】
ある夜、巨大な植物「ワールドツリー」が急成長し、カービィの家ごと天空へ持ち上げられてしまった。目覚めたカービィが外に出ると、そこは空に浮かぶ浮遊大陸「フロラルド」だった。謎の多本腕の人物タランザが、カービィではなくデデデ大王をさらっていくのを目撃したカービィは、ワールドツリーを登り、デデデ救出の旅に出る。
美しい花々の国を支配する女王クィン・セクトニアは、「美」に執着するあまり狂気に支配されていた。タランザの悲しい忠誠心と、かつては良き女王だったセクトニアの末路。鏡の大迷宮との意外な繋がりも示唆される。
No.11 星のカービィ ロボボプラネット
| 発売日 | 2016年4月28日 |
|---|---|
| 開発 | HAL研究所 |
| 発売 | 任天堂 |
| 売上本数 | 132万本(世界) |
| 対応ハード | ニンテンドー3DS |
| プロデューサー | 西村健太 / 角田祐介 / 熊崎信也 |
| ディレクター | 熊崎信也 |
| デザイナー | ファーマン力 |
| シナリオ | 熊崎信也 |
| サウンド | 安藤浩和 / 石川淳 |
【概要】
「キカイ化されたポップスター」を舞台に、カービィがロボット「ロボボアーマー」に乗って戦うSF色の強い作品。敵の技術を逆利用し、アーマー自体がコピー能力によって変形するギミックが爽快。SF設定ならではのハードな世界観と、企業ドラマのような親子の絆を描いたストーリーが高く評価されている。サブゲーム「みんなで!カービィハンターズ」は後に基本無料ソフトとして配信された。ファミ通クロスレビューは36点(プラチナ殿堂)。
【あらすじ】
悪の企業「ハルトマンワークスカンパニー」がポップスターを侵略し、またたく間に機械化してしまった。メタナイトやデデデ大王も敗北する中、カービィは敵が乗り捨てたインベーダーアーマーに搭乗し、自分の力で「ロボボアーマー」としてカスタマイズして反撃を開始する。
行く手に立ちふさがるのは、社長の秘書スージー。彼女と社長ハルトマンの間には、過去の事故による悲しいすれ違いがあった。全ての元凶であるマザーコンピューター「星の夢」が暴走した時、カービィは戦艦ハルバードと合体し、宇宙空間での最終決戦へと挑む。
No.12 星のカービィ スターアライズ
| 発売日 | 2018年3月16日 |
|---|---|
| 開発 | HAL研究所 |
| 発売 | 任天堂 |
| 売上本数 | 438万本(世界) |
| 対応ハード | Nintendo Switch |
| プロデューサー | 西村健太 / 角田祐介 / 熊崎信也 |
| ディレクター | 熊崎信也 / 遠藤裕貴 |
| デザイナー | ファーマン力 |
| サウンド | 安藤浩和 / 石川淳 / 小笠原雄太 |
【概要】
Nintendo Switch初のカービィ本編。ハートを投げて敵を仲間にする「フレンズ能力」により、最大4人での協力プレイが可能になった。『スーパーデラックス』の要素を進化させた集大成的な作品。発売後の無料アップデートで、リック・カイン・クーやマルク、マホロアなど、過去作のドリームフレンズが次々と追加され、シリーズファンを歓喜させた。ファミ通クロスレビューは35点。難易度は低めだが、「アナザーディメンションヒーローズ」などの追加コンテンツで歯ごたえのある遊びも提供された。
【あらすじ】
宇宙の彼方で謎の儀式が行われ、闇の結晶「ジャマハート」が全宇宙へと降り注いだ。プププランドにもその影響が及び、デデデ大王やメタナイトたちが凶暴化してしまう。昼寝をしていたカービィにもハートが降り注ぐが、それは不思議な力を持つ「フレンズハート」だった。カービィはハートを投げて敵を仲間にし、正気を取り戻したライバルたちとも協力して異変の調査に乗り出す。
行く手を阻むのは、ジャマハートを回収する「三魔官シスターズ」。彼女たちが崇拝する魔術師「ハイネス」は、かつて一族を追放された復讐のため、破壊の神「エンデ・ニル」を復活させようとしていた。銀河の果てにある祭壇で、全宇宙の存亡をかけた、フレンズたちとの最後の戦いが始まる。
第4期:3Dへの進化と新時代(2022-現在)
2022年、シリーズ30周年という記念すべき年に、カービィはついに「完全3Dアクション」へと進化した。これまでも3D化の実験は行われてきたが、「3D酔い」や「距離感の掴みにくさ」という課題があり、本編では採用されてこなかった。
しかし、Nintendo Switchの世界的ヒットと、オープンワールドゲーム(『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』など)の流行という背景の中、満を持して登場した『ディスカバリー』は、カメラワークの工夫や照準補正などの技術でそれらの課題を克服。「誰でも遊べる3Dアクション」の新たなスタンダードを提示し、シリーズ最大級のヒットを記録した。
2024年には任天堂ミュージアムなど、ゲーム外での露出も増え、カービィの存在感は増すばかりである。
No.13 星のカービィ ディスカバリー
| 発売日 | 2022年3月25日 |
|---|---|
| 開発 | HAL研究所 |
| 発売 | 任天堂 |
| 売上本数 | 612万本(世界) |
| 対応ハード | Nintendo Switch |
| プロデューサー | 西村健太 / 角田祐介 / 熊崎信也 / 二宮雄大 |
| ディレクター | 熊崎信也 / 神山達哉 |
| デザイナー | ファーマン力 |
| サウンド | 石川淳 / 安藤浩和 / 小笠原雄太 / 下岡優希 |
【概要】
シリーズ初の3Dアクションゲーム。文明が崩壊した「新世界」を舞台に、360度自由に動き回れる冒険が楽しめる。新能力「ほおばりヘンケイ」は、車や自販機、三角コーンなどを吸い込んでその形状になるというユニークなもの。コピー能力を進化させる育成要素も追加された。The Game Awards 2022で「Best Family Game」を受賞するなど、世界中で高く評価された。ファミ通クロスレビューは36点(プラチナ殿堂)。初心者への配慮と、クリア後のやりこみ要素(裏ボス)の難易度のバランスが絶妙な一作。
【あらすじ】
プププランドの空に謎の渦が発生し、カービィやワドルディたちが吸い込まれてしまう。たどり着いたのは、かつて文明が栄えていたと思われる廃墟の世界。そこでカービィは、謎の敵「ビースト軍団」にさらわれるワドルディたちと、不思議な生き物「エフィリン」に出会う。
エフィリンと協力し、ワドルディたちを救出して町を発展させながら、新世界に隠された謎と、ビースト軍団の目的を暴く旅に出る。彼らが崇める「ID-F86」と呼ばれる完全生命体とは何なのか? クライマックスでは、星同士が衝突するほどの衝撃的なSF展開がプレイヤーを待ち受ける。
2022年は『ELDEN RING』や『スプラトゥーン3』、『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』など、歴史に残る超大作がひしめき合う当たり年だった。そんな激戦区の中で発売された『ディスカバリー』だが、「3Dになってもカービィらしさは失わない」という丁寧な作り込みが評価され、埋没することなく大ヒットを記録。親子2世代で楽しめるゲームとして、不動の地位を証明した。
まとめ
「誰でも遊べる」という優しい入り口を用意しながら、吸い込みとコピー能力という発明によって無限の奥深さを実現した『星のカービィ』。2Dから3Dへ、白黒から鮮やかな色彩へ、そしてステージクリア型から箱庭探索へと、その姿を変えながらも、根底にある「温かさ」は30年以上変わることがない。
HAL研究所の技術力と任天堂のプロデュース力が生んだこのピンクの英雄は、これからも世代を超えて愛され、まだ見ぬ夢の泉へと私たちを導いてくれるだろう。
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