「ゆうべは おたのしみでしたね」――。この言葉に聞き覚えがあるなら、あなたはきっと勇者の一人だろう。
1986年の第1作発売以来、日本のRPG(ロールプレイングゲーム)の代名詞として君臨し続ける『ドラゴンクエスト』。剣と魔法の王道ファンタジー、鳥山明による愛らしいモンスター、そしてすぎやまこういちの雄大な音楽。これらが織りなす世界は、単なるゲームを超え、日本の文化そのものとなった。
本記事では、社会現象を巻き起こした「ロト三部作」から、進化を続ける最新作まで、リメイク版を除く「オリジナル版」ナンバリング全11作品の歴史と進化を紐解いていく。
シリーズ基礎データ
『ドラゴンクエスト』(Dragon Quest)は、1986年にエニックス(現スクウェア・エニックス)より第1作が発売されたRPGシリーズ。略称は「ドラクエ」。
ゲームデザインの堀井雄二(『ポートピア連続殺人事件』)、キャラクターデザインの鳥山明(『ドラゴンボール』)、音楽のすぎやまこういち(『亜麻色の髪の乙女』など)という、各界のトップクリエイターが集結した「黄金のトライアングル」によって生み出された。
当時の日本には馴染みの薄かった「RPG」というジャンルを、コマンド選択式という遊びやすいシステムで一般層に普及させた功績は計り知れない。全シリーズの世界累計出荷・ダウンロード販売本数は8,800万本を超え、「最も長く続いている日本のRPG」としてギネス世界記録にも認定されている。
歴代ナンバリング作品一覧
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※売上は国内出荷・DL数の概算データ(リメイク版を含まないオリジナル版の数値)を参照。
| No | 発売日 | タイトル | 売上本数 |
|---|---|---|---|
| 1 | 1986/5/27 | ドラゴンクエスト | 150万本 |
| 2 | 1987/1/26 | ドラゴンクエストII 悪霊の神々 | 240万本 |
| 3 | 1988/2/10 | ドラゴンクエストIII そして伝説へ… | 380万本 |
| 4 | 1990/2/11 | ドラゴンクエストIV 導かれし者たち | 304万本 |
| 5 | 1992/9/27 | ドラゴンクエストV 天空の花嫁 | 280万本 |
| 6 | 1995/12/9 | ドラゴンクエストVI 幻の大地 | 320万本 |
| 7 | 2000/8/26 | ドラゴンクエストVII エデンの戦士たち | 417万本 |
| 8 | 2004/11/27 | ドラゴンクエストVIII 空と海と大地と呪われし姫君 | 370万本 |
| 9 | 2009/7/11 | ドラゴンクエストIX 星空の守り人 | 437万本 |
| 10 | 2012/8/2 | ドラゴンクエストX 目覚めし五つの種族 オンライン | 100万本超 |
| 11 | 2017/7/29 | ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて | 320万本 |
第1期:伝説の始まり「ロト三部作」(1986-1988)
ファミリーコンピュータ(ファミコン)全盛期。当時、日本の家庭用ゲーム市場では『スーパーマリオブラザーズ』(1985年)の大ヒットによりアクションゲームが主流だった。PCゲームの世界では『ウィザードリィ』や『ウルティマ』といったRPGが存在したが、難解でマニア向けとされていた。
そんな中、「子供でも遊べるわかりやすいRPG」を目指して開発されたのが『ドラゴンクエスト』だ。堀井雄二氏がライターを務めていた『週刊少年ジャンプ』の特集記事「ファミコン神拳」でRPGの概念を事前に啓蒙したこともあり、RPGというジャンルを一気にメジャーなものへと押し上げた。初期3作は「ロトの伝説」を軸に時系列がつながっており、わずか2年足らずという驚異的なスピードで3作品がリリースされたことで、熱狂が冷めることなく社会現象へと発展していった。
No.1 ドラゴンクエスト

| 発売日 | 1986年5月27日 |
|---|---|
| 開発 | チュンソフト |
| 発売 | エニックス |
| 売上本数 | 約150万本 |
| 対応ハード | ファミリーコンピュータ |
| プロデューサー | 千田幸信 |
| ディレクター | 中村光一 |
| デザイナー | 堀井雄二(ゲーム)、鳥山明(キャラ) |
| シナリオ | 堀井雄二 |
| サウンド | すぎやまこういち |
【概要】
すべてはここから始まった。1対1の戦闘、コマンド選択式のシステムなど、後のJRPGの基礎を築いた記念碑的作品。容量はわずか64KB(キロバイト)。限られた容量の中で、ひらがな20文字しか使えない制約を逆手に取った堀井節や、カニ歩き移動など工夫が詰まっている。当時のゲーム誌『ファミコン通信』のクロスレビューでは平均7.5点(40点満点中30点前後)と、発売当初は「人を選ぶ」という評価だったが、徐々に口コミで人気が爆発した。
【あらすじ】
アレフガルドの地は、悪の化身・竜王によって闇に覆われていた。ラダトーム城の王・ラルス16世は、かつて伝説の勇者ロトが授かった「光の玉」を奪われ、愛娘ローラ姫も誘拐されてしまう。そこへ現れた一人の若者。彼こそがロトの血を引く勇者だった。王様からわずかな軍資金と松明を受け取り、勇者はたった一人で広大な世界へと旅立つ。マイラ、リムルダールなどの町で情報を集め、虹のしずくを使って魔の島へ。物語の終盤、竜王から投げかけられる「世界の半分をお前にやろう」という甘い誘惑に、あなたはどう答えるか?
ファミコンブームの真っただ中。この年は『スーパーマリオブラザーズ2』や『ゼルダの伝説』、『メトロイド』といった任天堂の名作ディスクシステムソフトが次々とリリースされた年でもある。アクションゲーム全盛の中で、「文字を読んで物語を進める」というRPGは異端だったが、『ドラゴンクエスト』のヒットにより、翌年以降『ファイナルファンタジー』や『桃太郎伝説』などが生まれ、JRPGブームが到来することになる。高橋名人による「16連射」ブームなど、子供たちの関心がゲームに集中していた時代だ。
No.2 ドラゴンクエストII 悪霊の神々

| 発売日 | 1987年1月26日 |
|---|---|
| 開発 | チュンソフト |
| 発売 | エニックス |
| 売上本数 | 約240万本 |
| 対応ハード | ファミリーコンピュータ |
| プロデューサー | 千田幸信 |
| ディレクター | 中村光一 |
| デザイナー | 堀井雄二(ゲーム)、鳥山明(キャラ) |
| シナリオ | 堀井雄二 |
| サウンド | すぎやまこういち |
【概要】
前作から約半年という短期間で開発された続編。シリーズ初の「3人パーティ制」が導入され、戦略性が飛躍的に向上した。ファミ通クロスレビューでは38点(プラチナ殿堂)を獲得し、前作からの進化が高く評価された。しかし、デバッグ期間不足により、後半のダンジョン「ロンダルキアへの洞窟」の難易度が調整不足で伝説級の鬼畜仕様となったことや、「ふっかつのじゅもん」が最大52文字に増え、書き写しミスが多発したことはあまりに有名。それでも、仲間と冒険する楽しさを確立した功績は大きい。
【あらすじ】
前作から100年後の世界。大神官ハーゴンの手により、ムーンブルク城が陥落。生き残った兵士から凶報を受け取ったローレシアの王子は、ハーゴン討伐の旅に出る。同じロトの血を引くサマルトリアの王子、ムーンブルクの王女を探し出し、3人の力を合わせて悪霊の神々に立ち向かう。広大な海、5つの紋章集め、そして船の入手により、行動範囲は前作の数倍に広がった。雪原の台地ロンダルキアを越えた先、ハーゴンの神殿で待ち受けるのは、破壊の神シドーとの死闘である。
No.3 ドラゴンクエストIII そして伝説へ…

| 発売日 | 1988年2月10日 |
|---|---|
| 開発 | チュンソフト |
| 発売 | エニックス |
| 売上本数 | 約380万本 |
| 対応ハード | ファミリーコンピュータ |
| プロデューサー | 千田幸信 |
| ディレクター | 中村光一 |
| デザイナー | 堀井雄二(ゲーム)、鳥山明(キャラ) |
| シナリオ | 堀井雄二 |
| サウンド | すぎやまこういち |
【概要】
ロト三部作の完結編にして、シリーズ最高傑作との呼び声も高い作品。キャラクターメイキングと「転職システム」により、自分だけのパーティを作れる自由度が爆発的な人気を呼んだ。発売日には家電量販店に数キロの行列ができ、学校や会社を休む人が続出。「ドラクエ狩り」という犯罪まで発生し、ニュース番組でトップニュースとして報じられる社会現象となった。ファミ通クロスレビューは38点。「自由度の高さ」と「洗練されたバランス」が絶賛された。バッテリーバックアップ(冒険の書)が初搭載されたが、データが消えた際の「おきのどくですが…」の呪いの音楽はトラウマとして有名。
【あらすじ】
アリアハンの若者が、亡き父・オルテガの遺志を継ぎ、魔王バラモス討伐の旅に出る。ルイーダの酒場で仲間を集め、ダーマ神殿で職業を変え、世界中を巡って6つのオーブを集める。ついに魔王の城へ乗り込みバラモスを倒したと思われたその時、真の闇「大魔王ゾーマ」の存在が明らかになる。ギアガの大穴の先に広がっていたのは、かつて冒険した「あのアレフガルド」だった。光の玉を持たずに挑むゾーマ戦の絶望感と、エンディングで明かされる「ロトの伝説」の真実は、プレイヤーに深い感動を与えた。
第2期:導かれし天空シリーズ(1990-1995)
ハードがスーパーファミコンへと移行する過渡期から円熟期にあたる時代。「天空城」や「天空装備」を共通項とした3部作(IV・V・VI)が展開された。
この時期の最大の特徴は、ストーリーテリングの進化と、ライバル作品との切磋琢磨だ。1987年に登場したスクウェアの『ファイナルファンタジー』シリーズが映像美とドラマ性で台頭し、RPG市場は「ドラクエvsFF」の二強時代へと突入する。ドラクエ側も、オムニバス形式(IV)、親子3代の大河ドラマ(V)、自分探しの旅(VI)と、単なる勧善懲悪に留まらない重厚なシナリオで対抗。AI戦闘などの新システムも積極的に導入された変革期である。また、人気キャラのトルネコがスピンオフ『不思議のダンジョン』シリーズの主役に抜擢されるなど、ドラクエワールドの拡張が始まったのもこの頃だ。
No.4 ドラゴンクエストIV 導かれし者たち

| 発売日 | 1990年2月11日 |
|---|---|
| 開発 | チュンソフト |
| 発売 | エニックス |
| 売上本数 | 約304万本 |
| 対応ハード | ファミリーコンピュータ |
| プロデューサー | 千田幸信 |
| ディレクター | 中村光一 |
| デザイナー | 堀井雄二(ゲーム)、鳥山明(キャラ) |
| シナリオ | 堀井雄二 |
| サウンド | すぎやまこういち |
【概要】
全5章からなるオムニバス形式を採用。第1章から第4章までは、立場の異なる仲間たちが主役となり、最終の第5章で勇者の元に集結するというドラマチックな構成。ファミコン最後の作品にして、AI(人工知能)によるオートバトルや、馬車システムによる多人数パーティを実現した技術的意欲作。ファミ通クロスレビューは37点。AI戦闘に関して「思い通りに動かない」という批判もあったが、キャラクター個々の性格を表現する手段としては機能していた。3章の商人トルネコは特に人気を博し、後にスピンオフ作品の主役に抜擢された。
【あらすじ】
王宮の戦士、武術大会を目指す姫、武器屋の商人、姉妹の踊り子と占い師…。世界各地で導かれるように冒険を始めた彼らは、共通の敵「地獄の帝王エスターク」の影を感じ取っていた。そして第5章、人里離れた村で育てられた勇者は、魔族の王ピサロに村を焼き払われ、幼馴染のシンシアを失う。復讐と平和のため、勇者は旅立つ。世界中に散らばった導かれし者たちが勇者の元に集い、天空城への道が開かれる。魔族の王ピサロの悲しい過去と動機も深く描かれ、単なる悪とは言い切れない敵役の存在感が際立つ。
この年の11月にスーパーファミコン(SFC)が発売されることになり、ゲーム業界は世代交代の熱気に包まれていた。任天堂の『スーパーマリオワールド』やカプコンの『ストリートファイターII』(アーケード版稼働は91年だがブームの下地はこの頃)など、表現力が格段に上がったゲームが登場し始めた時期。『ドラクエIV』はファミコンという枯れた技術の集大成として発売され、その完成度の高さでハード末期ながら300万本を超える大ヒットを記録した。
No.5 ドラゴンクエストV 天空の花嫁

| 発売日 | 1992年9月27日 |
|---|---|
| 開発 | チュンソフト |
| 発売 | エニックス |
| 売上本数 | 約280万本 |
| 対応ハード | スーパーファミコン |
| プロデューサー | 千田幸信 |
| ディレクター | 山名学 |
| デザイナー | 堀井雄二(ゲーム)、鳥山明(キャラ) |
| シナリオ | 堀井雄二 |
| サウンド | すぎやまこういち |
【概要】
シリーズ初のSFC作品。親子3代にわたる壮大な大河ドラマを描く。主人公が勇者ではなく「勇者の父親」であるという設定や、倒したモンスターを仲間にできるシステムが画期的だった。ファミ通クロスレビューは36点。シナリオの評価は極めて高いが、戦闘パーティが最大3人になったことや、ボリューム不足といった点が一部で批評された。しかし、人生の重大な決断を迫られる「結婚イベント」は、今なおファンの間で激論が交わされる究極の選択として語り継がれている。また、モンスターを仲間にするシステムは、後に『ドラゴンクエストモンスターズ』シリーズへと発展していった。
【あらすじ】
父パパスと共に旅をする少年時代。しかし、父は目の前でゲマの手にかかり、子供の命を守るために無抵抗のまま無惨な死を遂げる。奴隷として連れ去られ、青年へと成長した主人公は、父の遺言である「天空の勇者」と「母マーサ」を探す旅に出る。数奇な運命の末に結婚し、双子の子供を授かるが、妻と共に石にされてしまう。数年後、成長した子供たちによって石化を解かれた主人公。その息子こそが、探し求めていた天空の勇者だった。父の背中を追い、子供たちと共に進む、家族の絆を取り戻すための長い旅の物語。
No.6 ドラゴンクエストVI 幻の大地

| 発売日 | 1995年12月9日 |
|---|---|
| 開発 | ハートビート |
| 発売 | エニックス |
| 売上本数 | 約320万本 |
| 対応ハード | スーパーファミコン |
| プロデューサー | 千田幸信 |
| ディレクター | 山名学 |
| デザイナー | 堀井雄二(ゲーム)、鳥山明(キャラ) |
| シナリオ | 堀井雄二 |
| サウンド | すぎやまこういち |
【概要】
「発見」をテーマに、2つの世界(夢の世界と現実の世界)を行き来する複雑なシナリオが特徴。開発がチュンソフトからハートビートへ変更となり、当初の1994年春発売予定から1年半以上も延期された難産作。SFC最後の作品としてグラフィックは最高峰に達し、『III』以来となる転職システムが復活。特技や魔法のインフレ化が進み、ド派手な戦闘が楽しめるようになった。ファミ通クロスレビューは34点。延期の影響やPlayStationなどの次世代機が登場していた時期でもあり、点数はやや辛めだったが、仲間キャラのテリーは非常に人気が高く、後にスピンオフの主役となった。
【あらすじ】
オープニングは、魔王ムドーに敗れ、石にされる夢から始まる。目を覚ました主人公は、ライフコッドの村で妹と暮らす平凡な少年だった。しかし、精霊の導きにより、自分たちが住む世界とは異なる「夢の世界」が存在することを知る。2つの世界を行き来しながら、自分の正体と、魔王ムドーの真実を探る旅。ハッサン、ミレーユ、テリーといった個性的な仲間たちと共に冒険を進めるうちに、主人公は自分が「実体を失った精神だけの存在」であることを知る。本当の自分を取り戻し、幻の大地に隠された大魔王デスタムーアの野望を打ち砕く。
第3期:3Dへの進化と国民的RPGの完成(2000-2009)
2000年代に入り、プラットフォームをPlayStation、PlayStation 2、そして携帯機のニンテンドーDSへと移し、表現方法が2Dドットから3Dポリゴンへと劇的に進化した時代。
この時期のドラクエは、「開発期間の長期化」との戦いでもあった。『ファイナルファンタジーVII』がPlayStationで世界的なヒットを飛ばす中、ドラクエは沈黙を守り続けた。『VII』では石版による圧倒的なボリューム、『VIII』ではアニメのような等身大の3Dフィールド、『IX』では携帯機による「すれちがい通信」ブームと、作品ごとに全く異なる挑戦が行われた。常に時代の最新トレンドを取り込み、国民的ゲームとしての地位を盤石にした。
No.7 ドラゴンクエストVII エデンの戦士たち

| 発売日 | 2000年8月26日 |
|---|---|
| 開発 | ハートビート、アルテピアッツァ |
| 発売 | エニックス |
| 売上本数 | 約417万本 |
| 対応ハード | PlayStation |
| プロデューサー | 千田幸信 |
| ディレクター | 山名学 |
| デザイナー | 堀井雄二(ゲーム)、鳥山明(キャラ) |
| シナリオ | 堀井雄二 |
| サウンド | すぎやまこういち |
【概要】
「人は誰かになれる」というSMAP出演のCMと共に登場した、シリーズ最大ボリュームを誇る作品。CD-ROM2枚組。当初1997年度内の発売を目指していたが、度重なる延期を経て2000年夏にようやく発売された。クリア時間が100時間を超えることも珍しくなく、石版を集める作業感や、最初の戦闘までに1時間以上かかる導入部、フリーズバグなどが賛否両論を呼んだ。しかし、鬱展開とも呼ばれる重厚なショートストーリーの積み重ねは評価が高く、ファミ通クロスレビューでは38点のプラチナ殿堂入りを果たしている。
【あらすじ】
世界には「エスタード島」ひとつしかないと信じられていた平和な時代。漁師の息子である主人公と、好奇心旺盛なキーファ王子は、禁断の遺跡で不思議な石版を見つける。石版を通じて飛ばされた過去の世界は、魔物によって滅びの危機に瀕していた。過去の世界で問題を解決すると、現代に新たな島(大陸)が出現する。石版を集め、失われた世界を一つずつ取り戻していく中で、神と魔王の戦いの歴史が明らかになる。物語の途中、親友キーファとの別れという衝撃的な展開を経て、主人公は世界の運命を背負う精霊の守り手として覚醒していく。
2000年3月にはPlayStation 2が発売され、ゲーム業界は完全にソニーハードの独壇場となっていた。『ドラゴンクエストVII』はあえて旧世代機である初代PSで発売されたが、その普及台数の多さが400万本超えという記録的なセールスを後押しした。一方で、グラフィック面では同時期の『ファイナルファンタジーIX』などと比較され、「古臭い」「2Dと3Dの融合が中途半端」という批判も浴びた。携帯電話の普及が加速し、iモードなどが流行し始めたのもこの頃である。
No.8 ドラゴンクエストVIII 空と海と大地と呪われし姫君

| 発売日 | 2004年11月27日 |
|---|---|
| 開発 | レベルファイブ |
| 発売 | スクウェア・エニックス |
| 売上本数 | 約370万本 |
| 対応ハード | PlayStation 2 |
| プロデューサー | 市村龍太郎 |
| ディレクター | 日野晃博 |
| デザイナー | 堀井雄二(ゲーム)、鳥山明(キャラ) |
| シナリオ | 堀井雄二 |
| サウンド | すぎやまこういち |
【概要】
シリーズ初の完全3D化作品。開発に『ダーククラウド』などで実績のあったレベルファイブを起用。「見渡す限りの世界がある」というキャッチコピーの通り、鳥山明の絵がそのまま動いているかのようなトゥーンレンダリング技術と、地平線が見える広大なフィールドがプレイヤーを圧倒した。戦闘中にテンションを溜めて攻撃力を上げる「テンションシステム」や、アイテムを合成する「錬金釜」が初登場。ファミ通クロスレビューは39点と非常に高い評価を得たが、広大なマップゆえの移動の長さや、戦闘や画面切り替え時のロード時間の長さが一部でネックとされた。仲間キャラのヤンガスは、後に『少年ヤンガスと不思議のダンジョン』で主役を務めた。
【あらすじ】
トロデーン王国は、封印を解かれた道化師ドルマゲスの呪いにより、イバラに覆われ時を止められてしまう。王様は魔物の姿に、姫は馬の姿に変えられた。呪いから逃れた近衛隊長の主人公は、姿を変えられた王と姫と共に、ドルマゲスを追う旅に出る。旅の途中で出会った山賊のヤンガス、名家の魔法使いゼシカ、聖堂騎士ククール。個性的な仲間たちと共に、広大な3Dの世界を駆け巡る。ドルマゲスを倒しても解けない呪い。その背後に潜む暗黒神ラプソーンの存在と、主人公の出生の秘密が明かされる時、真の戦いが始まる。
No.9 ドラゴンクエストIX 星空の守り人

| 発売日 | 2009年7月11日 |
|---|---|
| 開発 | レベルファイブ |
| 発売 | スクウェア・エニックス |
| 売上本数 | 約437万本 |
| 対応ハード | ニンテンドーDS |
| プロデューサー | 市村龍太郎 |
| ディレクター | 日野晃博 |
| デザイナー | 堀井雄二(ゲーム)、鳥山明(キャラ) |
| シナリオ | 堀井雄二 |
| サウンド | すぎやまこういち |
【概要】
ナンバリング初の携帯機専用タイトル。当初、アクションRPGとして発表されたが大批判を浴びてコマンド式に戻した経緯や、2009年3月発売予定からの直前延期(重大なバグ発覚)など、発売前は波乱含みだった。しかし発売後は、マルチプレイと「すれちがい通信」に特化したシステムが爆発的なブームを巻き起こす。特に「まさゆきの地図」などのレアな宝の地図を求めて、駅や街中にDSを持った人々が溢れかえり、ニュースでも取り上げられる社会現象となった。ファミ通クロスレビューは満点の40点を獲得。セーブデータが1つしかない点が唯一の不満点として挙げられることが多い。
【あらすじ】
主人公は、人々の平和を守る「守護天使」。人間たちから感謝の気持ち「星のオーラ」を集め、世界樹に捧げることで、神の国への道が開かれるはずだった。しかし、大地震により天使の力を失い、地上へと落下してしまう。翼を失った主人公は、人間として世界を巡り、地上に散らばった「女神の果実」を集めることになる。ガングロギャルの妖精サンディと共に、失われた天使界の謎に迫る。ストーリーはシリアスだが、クリア後の「宝の地図」によるやり込み要素はシリーズ随一で、最強の魔王たちとの果てしない戦いがプレイヤーを待ち受ける。
第4期:オンラインへの挑戦と原点回帰(2012-現在)
インターネットの普及に合わせ、シリーズ初のMMORPG(多人数同時参加型オンラインRPG)に挑戦した『X』。そして30周年を記念して「勇者とは何か」を問い直した集大成『XI』。形は変われど、そこにあるのは変わらない「ドラクエらしさ」だった。一人で遊ぶ楽しさと、誰かと繋がる楽しさの双方を追求し続けている。
No.10 ドラゴンクエストX 目覚めし五つの種族 オンライン
| 発売日 | 2012年8月2日 |
|---|---|
| 開発 | スクウェア・エニックス(内製) |
| 発売 | スクウェア・エニックス |
| 売上本数 | 100万本超(※パッケージ版) |
| 対応ハード | Wii / Wii U / PC 他 |
| プロデューサー | 齊藤陽介 |
| ディレクター | 藤澤仁 / 齋藤力 |
| デザイナー | 堀井雄二(ゲーム)、鳥山明(キャラ) |
| シナリオ | 堀井雄二 他 |
| サウンド | すぎやまこういち |
【概要】
シリーズ初のMMORPG。インターネットを通じて、日本中のプレイヤーと同じ世界で冒険する。「オンラインなどドラクエではない」という古参ファンの批判も多かったが、サービス開始後は「ひとりで遊べるMMO」としての快適さや、充実したストーリーが高く評価された。オーガやエルフなど5つの種族から姿を選び、職人になってアイテムを作ったり、自分の家を建てたりと、戦闘以外の生活要素も充実している。ファミ通クロスレビューは36点(Wii版)。
【あらすじ】
故郷の村を冥王ネルゲルに襲われ、命を落とした主人公。しかし、神の導きにより、別の種族の肉体を得て生き返る。人間の姿と、転生した種族の姿。二つの姿を持ちながら、アストルティアと呼ばれる広大な世界を冒険し、ネルゲルを倒すためのキーエンブレムを集める旅に出る。バージョンアップごとに新たな大陸やストーリーが追加され、魔界や天界へと冒険の舞台は広がり続けている。オンラインならではの「進化し続ける物語」がここにある。
2012年はスマートフォンの普及が爆発的に進み、『パズル&ドラゴンズ』などのソーシャルゲームが台頭し始めた時期である。家庭用ゲーム機市場がスマホゲームに押され始める中、Wiiという家庭用ハードで本格的なMMORPGを展開した『ドラクエX』は大きな挑戦だった。月額課金制のゲームへの抵抗感がまだ強い時代だったが、ドラクエブランドの力で多くのオンライン未経験者をネットの世界へ導いた。
No.11 ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて
| 発売日 | 2017年7月29日 |
|---|---|
| 開発 | スクウェア・エニックス、オルカ、トイロジック |
| 発売 | スクウェア・エニックス |
| 売上本数 | 約320万本(PS4/3DS合算) |
| 対応ハード | PS4 / 3DS |
| プロデューサー | 齊藤陽介 |
| ディレクター | 内川毅 |
| デザイナー | 堀井雄二(ゲーム)、鳥山明(キャラ) |
| シナリオ | 堀井雄二 |
| サウンド | すぎやまこういち |
【概要】
シリーズ30周年記念作品。「勇者とは何か」をテーマに、シリーズの原点回帰と集大成を目指した傑作。PS4(美麗な3D)と3DS(懐かしの2D/3D切替)というスペックの異なるハードで同時発売されたことも話題に。過去作のオマージュが随所に散りばめられ、ファミ通クロスレビューでは満点の40点を獲得。クリア後の「真のエンディング」は、全ドラクエファンへの感謝状とも言える内容となっており、涙なしには見られない。
【あらすじ】
イシの村で育った主人公は、16歳の誕生日に自分が「勇者の生まれ変わり」であることを知る。王に会うためデルカダール城へ向かうが、そこで待っていたのは歓迎ではなく「悪魔の子」としての追害だった。追われる身となった勇者は、盗賊カミュをはじめとする仲間たちと出会い、世界を救うための旅に出る。命の大樹を目指す旅路の中で、魔王ウルノーガによって世界は崩壊してしまう。絶望的な世界で散り散りになった仲間を再び集め、勇者は魔王に挑む。そして、魔王を倒した後に明かされる「過ぎ去りし時を求めて」というサブタイトルの真の意味とは。
まとめ:ドラクエは人生そのものである
「ふっかつのじゅもん」をノートに必死で書き写したあの日から、オンラインで遠くの友と冒険する今日まで。
『ドラゴンクエスト』の歩みは、そのまま日本のRPG進化の歴史でした。 容量64KBの制約の中で想像力を羽ばたかせたロト三部作。重厚なドラマとAI戦闘で物語への没入感を深めた天空シリーズ。そして、表現力が飛躍し、社会現象すら巻き起こした3D・携帯機・オンラインへの挑戦。
振り返れば、本作は常に「変革」の連続でした。しかし、どれほどハードが進化し、システムが変わろうとも、ファンファーレが鳴り響いた瞬間の高揚感と、冒険の温かさだけは決して変わりません。これら11作品の軌跡は、単なるゲームの枠を超え、僕らの人生に寄り添い続けた「冒険の書」そのものなのです。
■新作情報



