この記事で分かる3つのこと
・2000年から2020年まで全13作を公開順に見どころ・あらすじ・レビューで完全網羅
・初心者向け「名作5選ルート」からコア向け「時系列ルート」まで3つの見る順番を提示
・新旧キャスト対照表とタイムライン分岐図でX-MEN世界の全体像を一目で把握できる
- 第1期:スーパーヒーロー映画革命期(2000〜2006)
- 第2期:ウルヴァリン単独作とシリーズ再構築期(2009〜2013)
- 第3期:タイムトラベルとR指定革命期(2014〜2018)
- 第4期:FOX版X-MEN終幕期(2019〜2020)
- おすすめ名作ランキングTOP3
- X-MEN映画はこの順番で見るのがおすすめ
- 質問(FAQ)コーナー
- X-MEN映画タイムライン完全整理図
- ミュータント能力一覧&強さランキングTOP10
- 新旧キャスト対照表
- プロフェッサーX vs マグニートー:思想対立の系譜
- FOX版X-MENからMCUへ:デッドプール&ウルヴァリンが架けた橋
- 歴代主題歌・テーマ曲一覧
- 全作品の公開日・興行収入一覧
- 関連作品
- まとめ
2000年、ブライアン・シンガー監督が放った『X-MEN』はMCU誕生前夜のスーパーヒーロー映画に革命をもたらした。
ミュータント差別を通じて人種問題・マイノリティの孤立を描く社会派の骨格と、ヒュー・ジャックマンら名優の17年におよぶ熱演が融合した全13作・累計興行収入約60億ドルの巨大フランチャイズを、ここに完全解読する。
シリーズ基礎データ
原作:マーベル・コミックス「X-MEN」(スタン・リー&ジャック・カービー、1963年創刊)。
映画シリーズは20世紀フォックスが映像化権を取得し、2000〜2020年に全13作を製作。主要プロデューサーはローレン・シュラー・ドナー。
累計世界興行収入:約60億ドル超。最高興行収入作品:『デッドプール2』(2018年)7億8,500万ドル。
主要キャスト:ヒュー・ジャックマン、パトリック・スチュワート、イアン・マッケラン、ジェームズ・マカヴォイ、マイケル・ファスベンダー、ライアン・レイノルズ。
第1期:スーパーヒーロー映画革命期(2000〜2006)
MCUが存在しなかった時代、スーパーヒーロー映画を「大人が真剣に観られるジャンル」として確立した初期三部作である。
2000年の第1作でシンガー監督は「ミュータント差別=現代の人種差別」という知的アプローチで評論家を唸らせ、続く2作目では9.11後の弾圧社会を投影した。第3作はシンガー降板後にブレット・ラトナーが引き継ぎ、シリーズ最高の興行収入を記録しながらも賛否両論の展開でファンの支持を分断した。
No.1 X-MEN
| 公開日(日本) | 2000年8月26日(土) |
|---|---|
| 全世界興行収入 | 2億9,600万ドル |
| 監督 | ブライアン・シンガー |
| 脚本 | デヴィッド・ヘイター |
| 主題歌・音楽 | マイケル・ケイメン(スコア) |
| 俳優 | ヒュー・ジャックマン(ウルヴァリン)、パトリック・スチュワート(プロフェッサーX)、イアン・マッケラン(マグニートー)、ハル・ベリー(ストーム)、ファムケ・ヤンセン(ジーン・グレイ)、ジェームズ・マースデン(サイクロップス) |
| メイン声優(日本語吹替) | ウルヴァリン(山路和弘)、プロフェッサーX(大木民夫)、マグニートー(有川博) |
【見どころ】
現代スーパーヒーロー映画の夜明けを告げた記念碑的作品である。
シンガー監督はコミック原作の娯楽性に加え「差別される側の孤独」を真剣に掘り下げ、マグニートーの過去にホロコースト生存者の設定を与えて歴史的重みを付与した。当初「ゲテモノ映画」と見なされたコミック実写化に本格的な社会派ドラマの骨格を組み込んだ功績は計り知れない。
【あらすじ】
近未来のアメリカ。上院議員ケリーがミュータント登録法の成立を目論む中、家出少女ローグはウルヴァリンと出会いプロフェッサーX率いるX-MENの施設に辿り着く。
マグニートーは世界の指導者を強制的にミュータントへ変える装置を自由の女神像で起動しようとしており、X-MENは陰謀阻止へ向かう。
【レビュー】
ジャックマンが革ジャンで葉巻をくわえた瞬間、スクリーンにウルヴァリンが生きた。
パトリック・スチュワートとマッケランの佇まいだけで知性と迫力の対立が成立する贅沢を、この1作目から惜しみなく味わえる。
2000年はミレニアムの興奮が冷めやらぬ中、日本ではiモード普及とPlayStation 2の爆発的ヒットが重なった年である。
映画では「バトル・ロワイアル」が論争を巻き起こし、洋画では「グラディエーター」が話題をさらった。コミック原作のスーパーヒーロー映画は長らく「子供向け三流エンタメ」との偏見と戦っていたが、シンガーは「ミュータント差別=人種差別」という知的切り口で評論家を唸らせた。マーベルが映画史の主役になる20年の旅は、この一本から始まった。
No.2 X-MEN2
| 公開日(日本) | 2003年7月19日(土) |
|---|---|
| 全世界興行収入 | 4億700万ドル |
| 監督 | ブライアン・シンガー |
| 脚本 | マイケル・ドハティ、ダン・ハリス、デヴィッド・ヘイター、ザック・ペン |
| 主題歌・音楽 | ジョン・オットマン(スコア) |
| 俳優 | ヒュー・ジャックマン(ウルヴァリン)、パトリック・スチュワート(プロフェッサーX)、イアン・マッケラン(マグニートー)、ハル・ベリー(ストーム)、ブライアン・コックス(ストライカー将軍)、アラン・カミング(ナイトクローラー) |
| メイン声優(日本語吹替) | ウルヴァリン(山路和弘)、プロフェッサーX(大木民夫)、マグニートー(有川博) |
【見どころ】
シリーズ最高傑作との呼び声も高い続編である。宿敵X-MENとマグニートーが手を組む大胆な展開に加え、ウルヴァリンの出生の謎「ウェポンX計画」の核心に迫る。
9.11テロ後のアメリカで制作され、「テロリストと見なされる少数者の苦境」を直接的に描いた社会派ドラマとアクションの高次融合が見事である。
【あらすじ】
ナイトクローラーがホワイトハウスで大統領暗殺未遂を起こす。この事件を口実にストライカー将軍がミュータント施設への強制捜索に乗り出し、X-MENはマグニートーと一時同盟を結ぶ。
その裏にはウルヴ リン自身の忌まわ い過去「ウェポンX計画」が絡み、ジーン・グレイの内なる力も覚醒し始める。
【レビュー】
オープニングのナイトクローラーによるホワイトハウス侵入シーンだけで映画館の空気が変わった。
「前作を全方位で超えた」と断言できる数少ない続編であり、シリーズ全13作を通じて最も完成度が高い一本だと確信する。
No.3 X-MEN:ファイナル ディシジョン
| 公開日(日本) | 2006年6月10日(土) |
|---|---|
| 全世界興行収入 | 4億5,900万ドル |
| 監督 | ブレット・ラトナー |
| 脚本 | ザック・ペン、サイモン・キンバーグ |
| 主題歌・音楽 | ジョン・パウエル(スコア) |
| 俳優 | ヒュー・ジャックマン(ウルヴァリン)、ハル・ベリー(ストーム)、ファムケ・ヤンセン(ジーン グレイ/ダーク・フェニックス)、パトリック・スチュ ート(プロフェッサーX)、イアン・マッケラン(マグニートー)、エレン・ペイジ(キティ・プライド) |
| メイン声優(日本語吹替) | ウルヴァリン(山路和弘)、プロフェッサーX(大木民夫)、マグニートー(有川博) |
【見どころ】
賛否渦巻く三部作の完結編。シンガーが『スーパーマン リターンズ』のために降板し、ブレット・ラトナーが引き継いだ。
「ミュータントの能力を消す治療薬」という挑発的設定のもとジーン・グレイが「ダーク・フェニックス」として覚醒し、プロフェッサ X死亡という衝撃展開が当時のファンを揺るがせた。
【あらすじ】
ミュータントの能力を消去する「キュア」の開発が発表され、ミュータントの間で「治療を受けるべきか」の分断が生まれる。
死んだはずのジーンが圧倒的な力で復活し、マグニートーはキュア製造拠点アルカトラズ島を攻撃する。ウルヴァリンは愛するジーンの命を奪う究極の選択を迫られる。
【レビュー】
プロフ ッサーXとサイクロップスを退場させる蛮勇に当時は怒ったが、後年のフューチャー&パストが全てを「なかったこと」にしてくれたおかげで、今は純粋に娯楽大作として楽しめる。ゴールデンゲートブリッジの移動シーンの迫力は素直にすごい。
第2期:ウルヴァリン単独作とシリーズ再構築期(2009〜2013)
三部作完結後、フランチャイズは新しい方向性を模索した。ウルヴァリンの出自を描く前日譚と、1960年代を舞台にした若き日のX-MENを描くリブート的新作の二軸で拡張を試みた時期である。
『X-MEN ZERO』(2009年)はライアン・レイノルズのデッドプール初演で後に重要な布石となり、『ファースト・ジェネレーション』(2011年)は冷戦スパイスリラーとして批評家を唸らせた。『SAMURAI』(2013年)は日本を舞台に不死の呪いと向き合う内面ドラマを描いている。
No.4 ウルヴァリン:X-MEN ZERO
| 公開日(日本) | 2009年7月11日(土) |
|---|---|
| 全世界興行収入 | 3億7,300万ドル |
| 監督 | ギャヴィン・フッド |
| 脚本 | デヴィッド・ベニオフ、スキップ・ウッズ |
| 主題歌・音楽 | ハリー・グレッグソン=ウィリアムズ(スコア) |
| 俳優 | ヒュー・ジャックマン(ウルヴァリン)、リーヴ・シュレイバー(サーベルトゥース)、テイラー・キッチュ(ガンビット)、ライアン・レイノルズ(ウェイド・ウィルソン)、ダニー・ヒューストン(ストライカー) |
| メイン声優(日本語吹替) | ウルヴァリン(山路和弘)、ウェイド・ウィルソン(加瀬康之) |
【見どころ】
ウルヴァリンの出生から「ウェポンX計画」でアダマンチウムを骨格に注入されるまでを描く前日譚である。
南北戦争からベトナム戦争まで各時代の戦場を渡り歩くオープニングモンタージュは秀逸で、ライアン・レイノルズがウェイド・ウィルソンを初演した点が後のデッドプール映画への重要な布石となった。
【あらすじ】
19世紀カナダで生まれたミュータントのジェームズ・ローガンは、弟ヴィクターとともに数々の戦争を生き延びた。
ストライカー将軍の特殊部隊に参加するも民間人への残虐行為に嫌気が差し離脱する。やがて愛する女性を殺された復讐のためアダマンチウム移植手術に志願するが、ストライカーには別の目論見があった。
【レビュー】
冒頭の各戦争モンタージュだけで観る価値がある。後半の脚本の粗は否定できないが、「ウルヴァリンはなぜ記憶を失ったのか」という長年の謎に答えてくれた一本として愛着がある。レイノルズの口達者なウェイドを見て、「この男の単独映画が観たい」と思った観客は世界中にいたはずである。
2009年はリーマンショック後の世界的不況の中、映画界では「アバター」が3D映画ブームを起こし歴史的興行記録を打ち立てた年である。
日本ではTwitterが上陸し始め、マーベルは「アイアンマン2」の撮影を開始してMCUの構想を本格化させた。FOXはX-MENの前日譚としてウルヴァリンの出生に踏み込み、後半の出来は批判されたものの「ウェポンX計画」のファン待望の映像化と、レイノルズのウェイド初演が7年後のデッドプール映画化への布石となった。
No.5 X-MEN:ファースト・ジェネレーション
| 公開日(日本) | 2011年8月13日(土) |
|---|---|
| 全世界興行収入 | 3億5,400万ドル |
| 監督 | マシュー・ヴォーン |
| 脚本 | アシュリー・エドワード・ミラー、ザック・スタンツ、ジェイン・ゴールドマン、マシュー・ヴォーン |
| 主題歌・音楽 | ヘンリー・ジャックマン(スコア) |
| 俳優 | ジェームズ・マカヴォイ(チャールズ・エグゼビア)、マイケル・ファスベンダー(エリック・レーンシャー)、ジェニファー・ローレンス(ミスティーク)、ケヴィン・ベーコン(セバスチャン・ショウ)、ローズ・バーン(モイラ・マクタガート) |
| メイン声優(日本語吹替) | チャールズ(内田夕夜)、エリック(三木眞一郎)、ミスティーク(牛田裕子) |
【見どころ】
1962年のキューバ危機を舞台にした知的なスパイスリラー仕立てのX-MEN。マシュー・ヴォーンが監督を担い、若きチャールズとエリックの出会い・友情・決別を史実と絡めて描いた。
マカヴォイとファスベンダーの演技合戦が圧倒的で、「なぜ二人が宿敵になるのか」の必然性が丁寧に紡がれている。ジェニファー・ローレンスはこの作品で大スターへの足がかりを掴んだ。
【あらすじ】
1962年。CIAのモイラがセバスチャン・ショウ率いる秘密結社「ヘルファイア・クラブ」の陰謀を察知し、テレパスのチャールズに協力を求める。
チャールズはショウへの復讐を誓うエリックとともに若いミュータントを訓練してチームを結成するが、キューバ危機の最中に二人の友情は思想の違いから亀裂が走り始める。
【レビュー】
エリックがナチスの残党を追うバーのシーンで、グラスのビールが凍りつくほどの殺気を漂わせるファスベンダーの顔に震えた。
友情の終わりを描く最終盤、砂浜でチャールズの脚が折れる瞬間が今も胸を抉る。旧シリーズの全ドラマを一段深くしてくれる傑作である。
No.6 ウルヴァリン:SAMURAI
| 公開日(日本) | 2013年9月13日(金) |
|---|---|
| 全世界興行収入 | 4億1,500万ドル |
| 監督 | ジェームズ・マンゴールド |
| 脚本 | マーク・ボンバック、スコット・フランク |
| 主題歌・音楽 | マルコ・ベルトラミ(スコア) |
| 俳優 | ヒュー・ジャックマン(ウルヴァリン)、渡辺謙(ヤシダ)、タオ・オカモト(マリコ)、リラ・フクシマ(ユキオ)、ウィル・ユン・リー(ハラダ) |
| メイン声優(日本語吹替) | ウルヴァリン(山路和弘) |
【見どころ】
日本を全面的な舞台に選んだ異色のウルヴァリン単独作である。後に『LOGAN』でも組むジェームズ・マンゴールド監督が「不死身であることの孤独と重さ」をウルヴァリンに深く刻み込んだ。
長崎・東京・箱根で実際にロケが行われ、渡辺謙ら日本人キャストが多数出演する。新幹線屋根上での格闘シーンは映像的な独創性が光る。
【あらすじ】
ジーンを殺した罪悪感からカナダの山中で隠遁するローガンのもとに日本人女性ユキオが現れ、彼を日本へ招く。
長崎で命を救った大富豪ヤシダが死の床で「不死の能力を譲ってほしい」と告げ、孫娘マリコを守ることになったローガンは回復能力が失われた状態でヤクザや忍者と戦いながら真の敵を突き止めていく。
【レビュー】
新幹線の屋根で刀と爪がぶつかり合う画は、ハリウッド映画における「日本」の描き方として過去作の中でも特に説得力がある。
後に同じマンゴールド監督がLOGANで完成させる「老いるヒーロー」の実験が、すでにこの一本で始まっていたことを知ると感慨深い。
第3期:タイムトラベルとR指定革命期(2014〜2018)
X-MENシリーズが最大の輝きを放った黄金期である。シンガー復帰作『フューチャー&パスト』は旧キャストと新キャストを時間移動で融合させシリーズ最高興収7億4,600万ドルを記録した。
翌年にはR指定の『デッドプール』が製作費5,800万ドルで7億8,300万ドルを叩き出す異次元の成果を上げ、『LOGAN』はスーパーヒーロー映画初のアカデミー賞脚色賞ノミネートを達成した。第3期の5本だけで累計34億ドル超という驚異的な数字がフランチャイズ絶頂を物語る。
No.7 X-MEN:フューチャー&パスト
| 公開日(日本) | 2014年5月30日(金) |
|---|---|
| 全世界興行収入 | 7億4,600万ドル |
| 監督 | ブライアン・シンガー |
| 脚本 | サイモン・キンバーグ |
| 主題歌・音楽 | ジョン・オットマン(スコア) |
| 俳優 | ヒュー・ジャックマン(ウルヴァリン)、ジェームズ・マカヴォイ(若きプロフェッサーX)、マイケル・ファスベンダー(若きマグニートー)、ジェニファー・ローレンス(ミスティーク)、パトリック・スチュワート(プロフェッサーX)、イアン・マッケラン(マグニートー) |
| メイン声優(日本語吹替) | ウルヴァリン(山路和弘)、若チャールズ(内田夕夜)、若エリック(三木眞一郎)、プロフェッサーX(大木民夫)、マグニートー(家弓家正) |
【見どころ】
旧キャストと新キャストを一本に共存させたシリーズ最大の野心作であり最高興行収入作である。コミック「Days of Future Past」を原作にウルヴァリンの意識を1970年代に送り込むタイム ラベルSFとして構成した。
エヴァン・ピーターズ演じるクイックシルバーが「Time in a Bottle」に乗せて弾丸をかわすシーンは映画史に刻まれた名場面である。
【あらすじ】
近未来。ロボット兵器「センチネル」がミュータントを殲滅する絶望的世界で、X-MENはウルヴァリンの意識を1973年に送り込む計画を実行する。
タイムスリップしたウルヴァリンは廃人同然の若きチャールズと投獄中のエリックを説得し、センチネル開発の引き金となるミスティークの暗殺を阻止しようとする。
【レビュー】
旧シリーズの全キャラが走馬灯のよう 揃い踏みするラスト、チャールズの教室にジーンとサイクロップスが生きている姿を見た瞬間の涙腺崩壊は忘れられない。
シリーズの「やり直し」をタイムトラベルで堂々とやり遂げた、この大胆さだけでも歴代1位に値する。
2014年はMCUが絶頂期に差し掛かった年で、「キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー」が政治スリラーとして絶賛された。日本では「アナと雪の女王」が社会現象化し歴史的ヒッ を記録している。
そのエンタメ爆発の年に7億ドル超えを達成したフューチャー&パストは「MCUに匹敵するフランチャイズがFOXにもある」と証明した一本であった。クイックシルバーのシーンは撮影に3,000fpsの超高速カメラを使用しており、MCU版との明暗を分けた。
No.8 デッドプール
| 公開日(日本) | 2016年6月1日(水) |
|---|---|
| 全世界興行収入 | 7億8,300万ドル |
| 監督 | ティム・ミラー |
| 脚本 | レット・リース、ポール・ワーニック |
| 主題歌・音楽 | トム・ホルケンボルグ(スコア)/「Angel of the Morning」(ジュース・ニュートン) |
| 俳優 | ライアン・レイノルズ(デッドプール/ウェイド・ウィルソン)、モリーナ・バッカリン(ヴァネッサ)、エド・スクレイン(エイジャックス)、T・J・ミラー(ウィーズル)、ジーナ・カラーノ(エンジェル・ダスト) |
| メイン声優(日本語吹替) | デッドプール(加瀬康之) |
【見どころ】
スーパーヒーロー映画の常識を根本から覆したR指定の革命作である。第4の壁を破って観客に直接語りかけるメタフィクション的ユーモアと容赦ない暴力・下ネタを組み合わせながら、核心には純愛ラブストーリーを置く絶妙な構成が見事だ。
レイノルズが自ら脚本開発に関与し、2010年流出のテストフッテージへの熱狂的反応を受けてFOXが製作を決断した経緯を持つ。
【あらすじ】
元傭兵ウェイド・ウィルソンは末期癌と診断され、治療と引き換えにミュータント化実験に志願する。
悪人エイジャックスの手で異常な再生能力を植え付けられるも醜く変貌した顔のまま捨てられ、愛するヴァネッサへの想いと復讐心を胸に「デッドプール」として戦いに身を投じる。
【レビュー】
第4の壁をぶち破って観客に「今いい場面なのにカメラの予算がなくて」と言い放つ瞬間、映画館が笑いで揺れた。
下品で残酷で愛に真っ直ぐな最悪のヒーローに、気がつけば心から声援を送っている自分がいる。R指定映画の世界興収記録を塗り替えた怪物である。
No.9 X-MEN:アポカリプス
| 公開日(日本) | 2016年8月11日(木) |
|---|---|
| 全世界興行収入 | 5億4,400万ドル |
| 監督 | ブライアン・シンガー |
| 脚本 | サイモン・キンバーグ |
| 主題歌・音楽 | ジョン・オットマン(スコア) |
| 俳優 | ジェームズ・マカヴォイ(プロフェッサーX)、マイケル・ファスベンダー(マグニートー)、ジェニファー・ローレンス(ミスティーク)、オスカー・アイザック(アポカリプス)、ソフィー・ターナー(ジーン・グレイ)、タイ・シェリダン(サイクロップス) |
| メイン声優(日本語吹替) | チャールズ(内田夕夜)、エリック(三木眞一郎)、アポカリプス(松平健)、ジーン(牛田裕子)、サイクロップス(木村良平) |
【見どころ】
1983年を舞台に古代エジプトから蘇った最初のミュータント「アポカリプス」との決戦を描く。ソフィー・ターナー(ジーン)、タイ・シェリダン(サイクロップス)ら新世代X-MENの顔見せとして機能した。
クイックシルバーの再登場シーンはフューチャー&パストを超える絶賛を受けたが、ヴィランの迫力不足が惜しまれる。
【あらすじ】
1983年のカイロ。数千年前のミュータント「アポカリプス」が覚醒し世界の「再起動」を宣言する。
マグニートー、ストーム、アーチエンジェル、サイロックを四騎士として従えたアポカリプスは核兵器を宇宙に放出して文明を一掃しようとし、新生X-MENが初の本格的な戦いに身を投じる。
【レビュー】
マグニートーの妻子が殺される森のシーンだけで映画一本分の感情が詰まっている。ファスベンダーの慟哭が画面から溢れ出す瞬間に胸が潰れた。
ヴィランのスケールに物足りなさはあるが、クイックシルバーの学園爆発シーンの爽快感だけで元は取れる一本である。
No.10 LOGAN/ローガン
| 公開日(日本) | 2017年6月1日(木) |
|---|---|
| 全世界興行収入 | 6億1,900万ドル |
| 監督 | ジェームズ・マンゴールド |
| 脚本 | ジェームズ・マンゴールド、スコット・フランク、マイケル・グリーン |
| 主題歌・音楽 | マルコ・ベルトラミ(スコア)/「Hurt」(ジョニー・キャッシュ、予告編使用) |
| 俳優 | ヒュー・ジャックマン(ローガン)、パトリック・スチュワート(プロフェッサーX)、ダフネ・キーン(ローラ/X-23)、ボイド・ホルブルック(ピアース)、ステファン・マーチャント(カリバン) |
| メイン声優(日本語吹替) | ローガン(山路和弘)、プロフェッサーX(麦人)、ローラ(鈴木梨央) |
【見どころ】
ヒュー・ジャックマン17年間の集大成にしてスーパーヒーロー映画の概念を解体した傑作。コミック「オールド・マン・ローガン」をベースに、老いて衰えたローガンが痴呆のプロフェッサーXを介護しながら自分のクローン少女ローラを守る旅を描く。
西部劇『シェーン』を引用した正統派アメリカ文学的手触りを持ち、アカデミー賞脚色賞にノミネートされた唯一のスーパーヒーロー映画である。
【あらすじ】
2029年。ミュータントがほぼ絶滅した世界で、老いて回復能力が衰えたローガンはリムジン運転手をしながらアルツハイマーのプロフェッサーXを密かに介護していた。
そこへ遺伝子がローガン由来の少女ローラが現れ、企業の追手から逃れつつ「エデン」と呼ばれる場所を目指す旅が始まる。疲れ果てた老戦士の最後の戦いである。
【レビュー】
エンドロールが始まった瞬間、館内のあちこちからすすり泣きが聞こえた。ローラが墓標の十字架を横に倒して「X」にするラストカットで、17年分の感情が一気に押し寄せる。
これはスーパーヒーロー映画ではなく、父と子の別れを描いた映画である。
No.11 デッドプール2
| 公開日(日本) | 2018年8月1日(水) |
|---|---|
| 全世界興行収入 | 7億8,500万ドル |
| 監督 | デヴィッド・レイッチ |
| 脚本 | ライアン・レイノルズ、レット・リース、ポール・ワーニック |
| 主題歌・音楽 | タイラー・ベイツ(スコア)/「Ashes」(セリーヌ・ディオン) |
| 俳優 | ライアン・レイノルズ(デッドプール)、ジョシュ・ブローリン(ケーブル)、ザジー・ビーツ(ドミノ)、ジュリアン・デニソン(ファイアーフィスト)、T・J・ミラー(ウィーズル) |
| メイン声優(日本語吹替) | デッドプール(加瀬康之)、ケーブル(大塚明夫)、ドミノ(佐古真弓) |
【見どころ】
シリーズ歴代最高興収7億8,500万ドルでR指定記録を再更新した続編である。「ジョン・ウィック」のデヴィッド・レイッチが監督しアクション演出が大幅に向上した。
ケーブル役にジョシュ・ブローリン(同年MCUのサノスも演じた)、ドミノ役にザジー・ビーツを迎えて世界観を拡張。セリーヌ・ディオンとのOPコラボやX-フォース全滅ギャグの笑いの密度は前作以上である。
【あらすじ】
ヴァネッサを失い生きる気力をなくしたデッドプールの前に、未来から来た傭兵ケーブルが炎を操る少年ファイアーフィストを抹殺しようとする。
デッドプールはファイアーフィストを守るべく「X-フォース」を結成するがメンバーは即座に全滅し、少年を救うための選択が自らの命と引き換えになる展開が待つ。
【レビュー】
X-フォースが全員即死するスカイダイビングシーンの狂気と、直後に来る少年への自己犠牲で急に泣かせてくる落差がこのシリーズの真骨頂である。エンドクレジット後のタイムトラベルで過去作すべてをメタ的に茶化す構成も含め、前作を超える完成度だと断言する。
第4期:FOX版X-MEN終幕期(2019〜2020)
ディズニーによる20世紀フォックス買収が2019年に完了し、X-MENのMCU統合という運命が確定した最終章である。
『ダーク・フェニックス』(2019年)は脚本家サイモン・キンバーグの初監督作だがスタジオ混乱でポストプロダクションが難航し、シリーズ最大の興行的失敗に終わった。最後の『ニュー・ミュータント』(2020年)はコロナ禍による2年延期を経て静かに幕を閉じ、20年間の物語はここで区切りを迎えた。
No.12 X-MEN:ダーク・フェニックス
| 公開日(日本) | 2019年8月23日(金) |
|---|---|
| 全世界興行収入 | 2億5,200万ドル |
| 監督 | サイモン・キンバーグ |
| 脚本 | サイモン・キンバーグ |
| 主題歌・音楽 | ハンス・ジマー(スコア) |
| 俳優 | ジェームズ・マカヴォイ(プロフェッサーX)、マイケル・ファスベンダー(マグニートー)、ジェニファー・ローレンス(ミスティーク)、ソフィー・ターナー(ジーン・グレイ)、ジェシカ・チャステイン(ヴク)、ニコラス・ホルト(ビースト) |
| メイン声優(日本語吹替) | チャールズ(内田夕夜)、エリック(三木眞一郎)、ビースト(浅沼晋太郎) |
【見どころ】
ファン待望の「ダーク・フェニックス・サーガ」映画化再挑戦である。脚本家キンバーグが初監督を務めたが、フォッ ス買収による混乱で終盤の大幅書き直しを余儀なくされた。
ソフィー・ターナーの演技は評価されたもののヴィランの薄さが批判を集め、製作費2億ドルに対して興収が3億に届かずシリーズ最大の商業的失敗となった。
【あらすじ】
1992年、宇宙任務中にジーンが謎のフェニックス・フォースに触れ制御不能な力を手にする。
プロフェッサーXが幼少期の記憶を封じていたと知り怒りから暴走するジーンに、宇宙人のヴクが接近する。X-MENとマグニートーはそれぞれの理由からジーンを止めようとするが、彼女の力はあまりにも強大であった。
【レビュー】
列車上でのX-MEN全員参加の最終決戦は見応えがあり、マカヴォイの「彼女を救えなかった」という表情だけで十分に泣ける。ファイナル ディシジョンから13年越しのリベンジが成功とは言い難い結末だったが、ターナーの孤独な瞳がフェニックスの悲しみを確かに伝えていた。
2019年はMCUが「アベンジャーズ/エンドゲーム」で世界興行収入歴代1位を塗り替えた年であり、スーパーヒーロー映画の頂点が確立された年である。
同年にディズニーによる20世紀フォックスの買収が完了し、X-MENの権利がマーベル・スタジオに戻った。日本では「天気の子」が142億円を記録し、「鬼滅の刃」がアニメとして社会現象の助走期に入った。その華やかなエンタメ年に、FOX最後のX-MEN本編が静かに幕を閉じたのは象徴的であった。
No.13 ニュー・ミュータント
| 公開日(日本) | 2020年10月16日(金) |
|---|---|
| 全世界興行収入 | 4,900万ドル |
| 監督 | ジョシュ・ブーン |
| 脚本 | ジョシュ・ブーン、ナレ・カルルソン |
| 主題歌・音楽 | マーク・スノー(スコア) |
| 俳優 | アニャ・テイラー=ジョイ(マジック)、メイジー・ウィリアムズ(レイニー)、チャーリー・ヒートン(サム)、ブルー・ハント(ダニ)、ヘンリー・ザガ(ロベルト) |
| メイン声優(日本語吹替) | 字幕版のみ(日本語吹替なし) |
【見どころ】
FOX版X-MEN最後の作品にして最も不運な映画の一つである。2018年に完成していたにもかかわらず買収問題とコロナ禍で公開が2年以上延期された。
ホラーテイ トを取り入れた若者群像劇という路線は斬新で、アニャ・テイラー=ジョイやメイジー・ウィリアムズら俳優陣の才能は確かなものだった。
【あらすじ】
事故で村が壊滅した後、ダニ・ムーンスターは正体不明の施設に収容される。炎のロベルト、テレポートするマジック、闇の力を持つレイニーら若いミュータント ちとともに「訓練」を受けるが、
ダニの力が具現化する恐怖の幻覚に一人ずつ追い詰められ、やがて施設の真の目的が明らかになる。
【レビュー】
閉鎖空間で若いミュータントたちが互いの恐怖と向き合うホラー演出は、シリーズ全13作の中で最も異質で新鮮だった。公開時期の不運で正当な評価を得られなかった哀しさはあるが、ターミネーターシリーズの終幕とは異なり「未来への種」を残して終わった点に希望がある。
おすすめ名作ランキングTOP3
全13作の中から、映画としての完成度・シリーズへの貢献度・観た後の余韻を総合的に評価して3本を選出した。初見の方がこの3本だけ観ても十分にX-MENの魅力が伝わる構成になっている。
第1位|ウルヴァリン17年間の最終章『LOGAN/ローガン』
LOGAN/ローガン(2017年)は、スーパーヒーロー映画という枠組みを完全に超越した一本である。
老いて回復能力が衰えたウルヴァリンがアルツハイマーのプロフェッサーXを介護しながら少女ローラを守る旅——その設定だけで従来のアメコミ映画との決定的な違いが分かる。ジェームズ・マンゴールド監督はスタインベック文学や西部劇『シェーン』のDNAを本作に組み込み、ヒーローの「終わり方」を圧倒的な密度で描き切った。アカデミー賞脚色賞にノミネートされたスーパーヒーロー映画は本作のみであり、その事実がすべてを物語る。ヒュー・ジャックマンが「最後のウルヴァリン」と宣言して臨んだ演技は2000年の第1作からの積み重ねがあってこそ成立するものであり、シリーズ全体への最高の敬意がこの映画に凝縮されている。
第2位|旧キャストと新キャスト夢の共演『フューチャー&パスト』
X-MEN:フューチャー&パスト(2014年)は、13作品中で最も完成度の高い「X-MEN映画」である。
パトリック・スチュワートとマカヴォイ、マッケランとファスベンダーが同じ映画に存在し、タイムトラベルというギミックで旧三部作と新シリーズを見事に接続した。サイモン・キンバーグの脚本は大量のキャラクターを「ウルヴァリン一人称」で整理する構造的判断が秀逸で、ファイナル ディシジョンの悲劇をリセットするカタルシ——清々しい解放感をラストに用意した。エヴァン・ピーターズのクイックシルバーがジム・クロウチの「Time in a Bottle」に乗せてペンタゴンの弾丸をかわすシーンは、X-MEN映画の代名詞として語り継がれるであろう。
第3位|チャールズとエリックの友情が砕ける瞬間『ファースト・ジェネレーション』
X-MEN:ファースト・ジェネレーション(2011年)は、X-MENシリーズの本質である「チャールズとエリックの関係性」に正面から向き合った作品である。
マシュー・ヴォーン監督は1962年のキューバ危機を背景に、007的なスパイスリラーの興奮と、二人の親友が宿敵へと変わっていく悲劇を重ね合わせた。マカヴォイとファスベンダーの演技合戦は旧シリーズのスチュワート&マッケランに匹敵する説得力を持ち、キューバ沖で弾丸がチャールズの脊椎を砕くラストは映画史に残る別れの場面である。この作品があるからこそフューチャー&パストの再会に深みが生まれた。ジェニファー・ローレンスがブレイク寸前の輝きを放つ点も見逃せない。
X-MEN映画はこの順番で見るのがおすすめ
全13作を一気に観る時間がない方のために、目的別に3つの厳選ルートを提示する。どのルートも5〜6本で構成しており、ハマったら残りを制覇する流れを想定している。
ルートA:名作セレクト(初心者向け5本)
X-MEN2 → ファースト・ジェネレーション → フューチャー&パスト → デッドプール → LOGAN
シリーズ未見の方がまず押さえるべき5本を厳選した。
X-MEN2でシリーズの基本構造と魅力を把握し、ファースト・ジェネレーションで若き日のチャールズ&エリックの関係を知った上で、フューチャー&パストの「全員集合」を体験する。デッドプールで笑い、LOGANで泣く——この流れだけでX-MENの幅広さを堪能できる。第1作は2よりも先に観ると尚良いが、2から入っても問題なく楽しめる構成になっている。
ルートB:時系列順(コアファン向け6本)
ファースト・ジェネレーション → X-MEN ZERO → X-MEN → X-MEN2 → フューチャー&パスト → LOGAN
物語内の時系列を追いたいコアファン向けの6本である。
1962年のファースト・ジェネレーションから始め、ウルヴァリンの前日譚を経て旧三部作本編へ入り、タイムラインが交錯するフューチャー&パストで伏線を回収し、2029年のLOGANで着地する。この順番で観ると「チャールズとエリックの関係が60年以上にわたって変化していく軌跡」が一本の太い線として繋がる。ファイナル ディシジョンはフューチャー&パストでリセットされるため省略しても物語は成立する。
ルートC:デッドプール完走ルート(笑い重視3本+α)
デッドプール → デッドプール2 → X-MEN ZERO(番外)→ 余力があればLOGAN
「X-MENの世界観に詳しくないけどデッドプールが気になる」という方に最適な最短ルートである。
デッドプール2本を連続で観ればライアン・レイノルズの魅力は十分に伝わる。余裕があればX-MEN ZEROでウェイド・ウィルソンの初登場(黒歴史版)を確認すると、デッドプールが「なぜあの映画をメタ的に茶化すのか」が分かって楽しさが倍増する。さらに余力があればLOGANを観ると、後のハリーポッター映画シリーズ同様に「長期シリーズの完結が持つ重み」を味わえる。
質問(FAQ)コーナー
X-MEN映画の歴史を深掘りする、マニアック度の高いQ&Aを5問用意した。
明日誰かに話したくなるトリビアを中心に構成している。
Q1. なぜX-MEN映画には2つのタイムラインが存在するのか
『フューチャー&パスト』(2014年)でウルヴァリンが1973年に意識を送り込み歴史を改変したことで、旧タイムライン(第1作〜ファイナル ディシジョン)の出来事が「起きなかった」世界線が誕生した。
これにより、ファイナル ディシジョンで死んだはずのジーンやサイクロップスが生存する「修正後タイムライン」が成立する。ただしLOGANは2029年が舞台のため、どちらのタイムラインの延長かは公式には明言されていない。制作側が意図的に曖昧にしたことでLOGANは「独立した物語」としても機能する構造になっている。
Q2. ヒュー・ジャックマンはなぜ土壇場でウルヴァリンに抜擢されたのか
当初ウルヴァリン役にはラッセル・クロウが候補に挙がっていたが辞退し、次にダグレイ・スコットが起用された。
しかしスコットが『ミッション:インポッシブル2』の撮影延長でスケジュールが合わなくなり、撮影開始3週間前という異例の土壇場でオーストラリア出身のほぼ無名俳優だったジャックマンに白羽の矢が立った。身長188cmはコミック版ウルヴァリン(160cm)とかけ離れていたが、オーディションでの圧倒的な存在感でシンガー監督を納得させ、結果的に17年間シリーズの顔を務めることになった。
Q3. デッドプールはなぜ「第4の壁」を破れるのか
コミック原作のデッドプールは1991年の初登場時から「自分がコミックのキャラクターであることを認識している」という特殊な設定を持つ。
これは「第4の壁を破る」と呼ばれ、読者や観客に直接語りかけることで、他のヒーロー映画にはないメタ的なユーモアを実現する。映画版ではライアン・レイノルズ自身がこの設定を最大限に活用し、「X-MEN ZEROでの自分の扱い」を自虐したり、MCUやDCを名指しでいじったりする。この特性は後の『デッドプール&ウルヴァリン』(2024年)でマルチバースと結びつき、MCU合流の「接着剤」として機能することになる。
Q4. X-MEN映画シリーズの累計興行収入は実際いくらなのか
FOX製作の全13作の累計は約60億ドル(約9,000億円)である。
内訳を見ると、第3期(2014〜2018年)の5本だけで約34億ドルを稼いでおり、フランチャイズ全体の半分以上を占める。最高記録はデッドプール2の7億8,500万ドルで、最低はニュー・ミュータントの4,900万ドルである。この約16倍の差は、シリーズの絶頂と終焉を如実に物語る数字だ。なおデッドプール&ウルヴァリン(2024年)はMCU作品として12億ドル超を記録しており、これを含めると関連作品全体では72億ドル以上に達する。
Q5. FOX版X-MENとMCUはどのように繋がったのか
2019年のディズニーによるFOX買収でX-MENの映画化権がマーベル・スタジオに戻り、2024年公開の『デッドプール&ウルヴァリン』がFOX版とMCUを正式に接続する架け橋となった。
同作ではデッドプールの「第4の壁を破る」能力がマルチバース理論と結びつき、ヒュー・ジャックマンのウルヴァリンがMCU世界に登場する理由付けとなっている。LOGANでの「最後のウルヴァリン」宣言との整合性は、別バースのローガンという設定で解決された。今後MCU本編にX-MENがどう合流するかは2026年時点で未発表である。
X-MEN映画タイムライン完全整理図
X-MEN映画の物語内時系列は『フューチャー&パスト』を分岐点として「旧タイムライン」と「修正タイムライン」に分かれる。以下に全13作の物語内年代と分岐構造を整理した。
| 物語内年代 | 旧タイムライン | 修正タイムライン |
|---|---|---|
| 1845〜1979 | X-MEN ZERO(ローガン誕生〜記憶喪失) | 同左(分岐前) |
| 1962 | ファースト・ジェネレーション(キューバ危機) | 同左(分岐前) |
| 1973 | フューチャー&パスト過去パート ※ここで分岐 | フューチャー&パスト過去パート(改変成功) |
| 1983 | — | アポカリプス |
| 1992 | — | ダーク・フェニックス |
| 2000頃 | X-MEN | — |
| 2003頃 | X-MEN2 | — |
| 2006頃 | ファイナル ディシジョン | —(リセット済) |
| 2013頃 | SAMURAI | — |
| 2016頃 | — | デッドプール/デッドプール2(独立時間軸) |
| 2023頃 | フューチャー&パスト未来パート(絶望世界) | フューチャー&パスト未来パート(平和世界) |
| 2029 | — | LOGAN(独立世界観) |
| 不明 | — | ニュー・ミュータント(時代設定曖昧) |
なおデッドプールシリーズは第4の壁を破るメタ構造のため厳密なタイムライン配置が困難であり、ファンの間では「独立宇宙」として扱われることが多い。LOGANもマンゴールド監督が「正史との接続にこだわらない」と明言しており、上記の配置はあくまで物語内年代の目安である。
ミュータント能力一覧&強さランキングTOP10
FOX版X-MEN映画に登場した主要ミュータントの能力と、劇中描写に基づく強さランキングを整理した。コミック版の設定とは異なる部分もあるため、あくまで映画版準拠である。
| 順位 | キャラクター | 能力 | 劇中最大の見せ場 |
|---|---|---|---|
| 1 | ジーン・グレイ(フェニックス) | テレパシー+テレキネシス+宇宙規模の破壊力 | ダーク・フェニックスで分子レベルの分解 |
| 2 | アポカリプス | 能力吸収・物質変換・テレポート・不老不死 | カイロ全域の建築物を 構築 |
| 3 | プロフェッサーX | 地球最強のテレパシー(セレブロ増幅時) | セレブロで全人類の思考を同時掌握 |
| 4 | マグニートー | 磁力操作(金属制御・磁場生成) | スタジアムをホワイトハウスに移動 |
| 5 | クイックシルバー | 超高速移動(音速以上) | 学園爆発から全生徒を救出 |
| 6 | ストーム | 天候操作(雷・竜巻・吹雪) | X-MEN2でジェット機周辺に竜巻生成 |
| 7 | ウルヴァリン | 超回復能力+アダマンチウム骨格+爪 | 核爆発を至近距離で生存(X-MEN ZERO) |
| 8 | ミスティーク | 完全変身(外見・声・指紋まで複製) | 大統領に化けてミュータント政策を転換 |
| 9 | デッドプール | 超回復(ウルヴァリン以上)+第4の壁認識 | 胴体切断後も再生して戦闘続行 |
| 10 | ナイトクローラー | 瞬間移動(視認範囲内) | ホワイトハウス単独潜入(X-MEN2冒頭) |
新旧キャスト対照表
X-MENシリーズは2011年の『ファースト・ジェネレーション』以降、同じキャラクターを若い俳優が演じる「新キャスト」体制に移行した。
フューチャー&パストでは旧新が共演を果たしている。
| キャラクター | 旧キャスト(2000〜2014) | 新キャスト(2011〜2019) |
|---|---|---|
| プロフェッサーX | パトリック・スチュワート | ジェームズ・マカヴォイ |
| マグニートー | イアン・マッケラン | マイケル・ファスベンダー |
| ミスティーク | レベッカ・ローミン | ジェニファー・ローレンス |
| ジーン・グレイ | ファムケ・ヤンセン | ソフィー・ターナー |
| サイクロップス | ジェームズ・マースデン | タイ・シェリダン |
| ストーム | ハル・ベリー | アレクサンドラ・シップ |
| ビースト | ケルシー・グラマー | ニコラス・ホルト |
| ウルヴァリン | ヒュー・ジャックマン(全シリーズ共通・唯一の皆勤俳優) | |
ヒュー・ジャックマンは旧キャスト世代に属しながらも新シリーズにカメオ出演し続け、フューチャー&パストでは両世代を繋ぐ文字通りの「橋」役を果たした。
唯一のシリーズ皆勤俳優である。
プロフェッサーX vs マグニートー:思想対立の系譜
X-MENシリーズ全体を貫く最大のテーマは「プロフェッサーXとマグニートーの思想対立」である。
同じ差別を受けるミュータントでありながら、共存を説くチャールズと人類への報復を選ぶエリックの対比は、現実のマーティン・ルーサー・キングJr.とマルコムXの思想的対立をモデルとしている。
| 作品 | チャールズの立場 | エリックの立場 | 関係性の変化 |
|---|---|---|---|
| ファースト・ジェネレーション | 人類と共存し教育で偏見を変える | ショウへの復讐→ミュータント至上主義へ | 親友→決裂 |
| X-MEN | 学園で若いミュータントを保護・教育 | 登録法阻止のため人類指導者をミュータント化 | 宿敵(尊敬あり) |
| X-MEN2 | ストライカーの弾圧に対抗 | 一時同盟→裏切り | 共闘→再離反 |
| フューチャー&パスト | 過去の自分を奮起させ歴史改変 | 未来では共闘/過去では暴走 | 最終的に和解 |
| LOGAN | 痴呆で能力暴走、ローガンに介護される | 不在(おそらく死亡済) | 対立を超えた先の孤独 |
13作を通じて二人は対立と共闘を繰り返すが、最終的にフューチャー&パストで和解し、LOGANではエリック不在のままチャールズが孤独に老いていく。
「かつての宿敵が今はもういない」という喪失感が、LOGANの切なさの根底にある。
FOX版X-MENからMCUへ:デッドプール&ウルヴァリンが架けた橋
2019年のディズニーによる20世紀フォックス買収により、X-MENの映画化権は約20年ぶりにマーベル・スタジオへ戻った。しかし20年間・13作品で築かれたFOX版X-MENの世界観を単純に消去することはできない。その「橋渡し」役を担ったのが2024年7月公開の『デッドプール&ウルヴァリン』である。
同作ではデッドプール特有の「第4の壁を破る」能力がマルチバース理論と結びつき、FOX版X-MENの世界が「消滅しかけた別宇宙」として位置づけられた。
ヒュー・ジャックマンがLOGANで「最後」と宣言したウルヴァリンが再登場できた理由は「別バースのローガン」という設定による。興行収入12億ドル超を記録し、R指定映画の世界記録を大幅に更新した。
この一本により、FOX版20年間の蓄積が「なかったこと」にされず、MCUの一部として正式に組み込まれる道筋が示された。ワイルド・スピードシリーズのようにキャスト総入れ替えではなく、「旧作への敬意を保ったままの世代交代」を実現した稀有な事例である。
歴代主題歌・テーマ曲一覧
X-MEN映画シリーズは多くの作品がオリジナルスコア中心の構成であり、ポップスの主題歌を持つ作品は少数である。
以下に全13作のメイン音楽担当と特徴的な使用楽曲を整理した。
| No | 作品(公開年) | 楽曲・スコア | 作曲家/アーティスト |
|---|---|---|---|
| 1 | X-MEN(2000) | オリジナルスコア | マイケル・ケイメン |
| 2 | X-MEN2(2003) | オリジナルスコア | ジョン・オットマン |
| 3 | ファイナル ディシジョン(2006) | オリジナルスコア | ジョン・パウエル |
| 4 | X-MEN ZERO(2009) | オリジナルスコア | ハリー・グレッグソン=ウィリアムズ |
| 5 | ファースト・ジェネレーション(2011) | オリジナルスコア | ヘンリー・ジャックマン |
| 6 | SAMURAI(2013) | オリジナルスコア | マルコ・ベルトラミ |
| 7 | フューチャー&パスト(2014) | 「Time in a Bottle」(劇中使用) | ジョン・オットマン/ジム・クロウチ |
| 8 | デッドプール(2016) | 「Angel of the Morning」(OP使用) | トム・ホルケンボルグ/ジュース・ニュートン |
| 9 | アポカリプス(2016) | 「Sweet Dreams」(劇中使用) | ジョン・オットマン/ユーリズミックス |
| 10 | LOGAN(2017) | 「Hurt」(予告編使用) | マルコ・ベルトラミ/ジョニー・キャッシュ |
| 11 | デッドプール2(2018) | 「Ashes」(OP使用) | タイラー・ベイツ/セリーヌ・ディオン |
| 12 | ダーク・フェニックス(2019) | オリジナルスコア | ハンス・ジマー |
| 13 | ニュー・ミュータント(2020) | オリジナルスコア | マーク・スノー |
X-MEN映画の音楽的特徴は、ポップス主題歌ではなくオーケストラスコアが中心である点にある。
第1作のマイケル・ケイメンが築いた重厚なテーマはジョン・オットマンが2・7・9作で引き継ぎ、シリーズの音楽的背骨となった。一方でデッドプールシリーズは既存のポップスを大胆に使う手法で差別化し、ジュース・ニュートンの「Angel of the Morning」やセリーヌ・ディオンの「Ashes」が意外性のある名場面を生んだ。特にフューチャー&パストのクイックシルバーシーンでジム・クロウチの「Time in a Bottle」が使われた瞬間は、映画と音楽の幸福な出会いとして語り継がれている。LOGANの予告編で使われたジョニー・キャッシュの「Hurt」は、老いた戦士の哀切を完璧に表現し、予告編だけで泣いた観客も多かった。
全作品の公開日・興行収入一覧
FOX版X-MEN映画全13作の日本公開日と全世界興行収入を一覧にまとめた。第3期(2014〜2018年)に興行的ピークが集中していることが一目で分かる。
| No | 公開日(日本) | タイトル | 全世界興行収入 |
|---|---|---|---|
| 1 | 2000/8/26 | X-MEN | 2億9,600万ドル |
| 2 | 2003/7/19 | X-MEN2 | 4億700万ドル |
| 3 | 2006/6/10 | X-MEN:ファイナル ディシジョン | 4億5,900万ドル |
| 4 | 2009/7/11 | ウルヴァリン:X-MEN ZERO | 3億7,300万ドル |
| 5 | 2011/8/13 | X-MEN:ファースト・ジェネレーション | 3億5,400万ドル |
| 6 | 2013/9/13 | ウルヴァリン:SAMURAI | 4億1,500万ドル |
| 7 | 2014/5/30 | X-MEN:フューチャー&パスト | 7億4,600万ドル |
| 8 | 2016/6/1 | デッドプール | 7億8,300万ドル |
| 9 | 2016/8/11 | X-MEN:アポカリプス | 5億4,400万ドル |
| 10 | 2017/6/1 | LOGAN/ローガン | 6億1,900万ドル |
| 11 | 2018/8/1 | デッドプール2 | 7億8,500万ドル |
| 12 | 2019/8/23 | X-MEN:ダーク・フェニックス | 2億5,200万ドル |
| 13 | 2020/10/16 | ニュー・ミュータント | 4,900万ドル |
関連作品
FOX版X-MEN13作の延長線上に位置する関連作品を紹介する。
2024年のMCU合流作はFOX版の遺産を正式に引き継いだ重要な一本であり、X-MEN全13作を観た後にこそ真の感動がある。
デッドプール&ウルヴァリン(2024年)
FOX版X-MENとMCUを正式に接続した記念碑的作品である。ショーン・レヴィ監督のもと、ライアン・レイノルズとヒュー・ジャックマンが再共演し、マルチバースを舞台にFOX版キャラクターが続々登場する。
世界興行収入12億ドル超を記録し、R指定映画の歴代最高記録を大幅に更新した。LOGANで「最後」と宣言したジャックマンの再登場は「別バースのローガン」という設定で整合性を確保しており、20年間の蓄積への敬意が随所に感じられる。X-MEN全13作を踏破した後に観ると、あらゆるカメオ出演の意味が分かり感動が倍増する。
まとめ
2000年から2020年にかけて20世紀フォックスが紡いだX-MEN映画全13作は、スーパーヒーロー映画の歴史そのものである。
第1作がMCU以前のスーパーヒーロー映画に知性と品格をもたらし、ファースト・ジェネレーションが友情と決別の悲劇を冷戦史の中に刻み、デッドプールがR指定の商業的可能性を証明し、LOGANが「ヒーローの終わり方」を提示した。
13作品それぞれが異なる挑戦を続けたこのフランチャイズの核心は、一貫して「違うことは罪なのか」という問いかけにある。ミュータントに向けられる差別と恐怖の眼差しは、現実社会のマイノリティが直面する困難と常に共鳴してきた。
2024年の『デッドプール&ウルヴァリン』によってFOX版の遺産はMCUに正式に組み込まれ、X-MENの物語は新たな章に入った。ジャックマンの爪、スチュワートの知性、レイノルズの笑い——彼らが刻んだ20年間は、これからも新しい観客に発見され続けるだろう。













