「波動拳!」「昇龍拳!」
ゲームセンターから響き渡る電子音声と、ボタンを叩く激しい音。1990年代初頭、日本中の、いや世界中のゲームセンターで共通して見られた光景である。
カプコンが開発した『ストリートファイター』シリーズは、1対1でキャラクターが戦う「対戦格闘ゲーム」というジャンルを確立し、爆発的なブームを巻き起こした。特に『ストリートファイターII』は、個性豊かなキャラクター、必殺技コマンド入力という画期的な操作システム、そして対戦における絶妙な駆け引きにより、社会現象と呼べるほどのヒットを記録した。学校帰りにゲーセンに寄り、見知らぬ相手と対戦台を挟んで熱戦を繰り広げる。それは当時の少年たちにとっての「果たし合い」であり、コミュニケーションの場でもあった。
2Dドット絵の極致から3Dモデルへの進化、ネット対戦の普及、そしてeスポーツとしてのプロ化。シリーズは35年以上の歴史の中で常に時代の最先端を走り続けてきた。本記事では、格闘ゲームの歴史そのものと言える本シリーズの軌跡を、家庭用ゲーム機で発売された主要タイトルを中心に、当時の熱狂と共に振り返っていく。
シリーズ基礎データ
『ストリートファイター』(Street Fighter)シリーズは、カプコンが開発・販売する対戦型格闘ゲーム。第1作は1987年にアーケードで稼働。1991年稼働の『ストリートファイターII』で爆発的な人気を獲得し、格闘ゲームブームを巻き起こした。プレイヤーは世界各国の格闘家から1人を選び、パンチやキック、コマンド入力による必殺技を駆使して相手の体力をゼロにすることを目指す。「リュウ」「ケン」「春麗(チュンリー)」といったキャラクターはゲーム界のアイコンとして世界的な知名度を誇る。近年では『ストリートファイターV』『6』などがeスポーツの主要種目として採用され、多額の賞金が懸かった大会が開催されるなど、競技シーンとしても大きな盛り上がりを見せている。シリーズ累計販売本数は5000万本を突破している。
歴代作品一覧
各タイトルをクリックすると、詳細解説へジャンプします。
※売上は日本国内の概算データ(移植版などを含む場合あり)を参照。
| No | 発売日 | タイトル | 売上本数 |
|---|---|---|---|
| 1 | 1988/12/4 | ファイティング・ストリート | 不明 |
| 2 | 1992/6/10 | ストリートファイターII | 約287万本 |
| 3 | 1993/7/11 | ストリートファイターIIターボ | 約210万本 |
| 4 | 1994/6/25 | スーパーストリートファイターII | 約129万本 |
| 5 | 1995/12/22 | ストリートファイターZERO | 約60万本 |
| 6 | 1996/8/9 | ストリートファイターZERO2 | 約70万本 |
| 7 | 1998/12/23 | ストリートファイターZERO3 | 約40万本 |
| 8 | 1999/12/16 | ストリートファイターIII W Impact | 約15万本 |
| 9 | 2000/6/29 | ストリートファイターIII 3rd STRIKE | 約10万本 |
| 10 | 2009/2/12 | ストリートファイターIV | 約30万本 |
| 11 | 2010/4/28 | スーパーストリートファイターIV | 約25万本 |
| 12 | 2016/2/18 | ストリートファイターV | 約15万本 |
| 13 | 2023/6/2 | ストリートファイター6 | 400万本(世界) |
※「ファイティング・ストリート」はPCエンジンCD-ROM²版の発売日。
第1期:伝説の幕開けと社会現象(1987-1994)
1987年、アーケードに『ストリートファイター』が登場した。当時としては珍しい「圧力センサー式ボタン」を採用し、ボタンを叩く強さで弱・中・強攻撃を使い分けるシステムは画期的だったが、操作の難しさもあり、一部のマニアに支持されるにとどまった。しかし、1991年に稼働を開始した続編『ストリートファイターII』は、すべてを変えた。
8人の個性的なキャラクター、レバーと6つのボタンを駆使した直感的な操作、そして「キャンセル」や「コンボ」といった偶然から生まれたテクニックが、対戦ツールとしての完成度を極限まで高めたのである。ゲームセンターには対戦台を取り囲む黒山の人だかりができ、家庭用移植版であるスーパーファミコン版『ストII』は国内だけで約287万本という驚異的なセールスを記録した。この時期はまさに「格ゲーバブル」であり、SNKの『餓狼伝説』やセガの『バーチャファイター』など、数多くのライバル作品が生まれ、切磋琢磨することでジャンル全体が巨大化していった時代である。1993年には両国国技館で全国大会が開かれるなど、現在のeスポーツの原点とも言える熱狂がそこにはあった。
No.1 ファイティング・ストリート

| 発売日 | 1988年12月4日 |
|---|---|
| 開発 | カプコン / アルファ・システム |
| 発売 | ハドソン |
| 売上本数 | 不明 |
| 対応ハード | PCエンジン CD-ROM² |
【概要】
1987年にアーケードで稼働した初代『ストリートファイター』の家庭用移植版。PCエンジンCD-ROM²のローンチタイトルとして発売された。タイトルは変更されているが、内容は忠実な移植。プレイヤーはリュウ(2P側はケン)のみ操作可能で、世界各国の敵キャラクターを倒していく。必殺技の威力が凄まじく、波動拳や昇龍拳がヒットすれば体力の3割〜4割を一気に奪える一撃必殺のバランスが特徴。CD媒体を活かした高音質なBGMやボイスも話題となった。
【あらすじ】
若き格闘家リュウは、師である剛拳のもとで修行を積み、自身の力を試すために世界格闘技大会「ストリートファイター」に参加する。中国の暗殺拳法家ゲン、棒術使いのイーグル、ムエタイの帝王サガットなど、世界中の強豪たちがリュウの前に立ちはだかる。苦戦を強いられながらも、リュウは修行で培った「波動拳」「昇龍拳」「竜巻旋風脚」という3つの必殺技を武器に勝ち進んでいく。決勝戦、サガットとの死闘の果てに、リュウの放った昇龍拳がサガットの胸に深い傷跡を刻み込む。それは、長く続く宿命の戦いの始まりだった。
1988年は、世界初のCD-ROM搭載ゲーム機として「PCエンジン CD-ROM²」が登場した年である。ファミコン全盛期において、カセットテープやフロッピーディスクを遥かに凌駕する540MBという大容量は衝撃的だった。『ファイティング・ストリート』は、その大容量を活かしてアーケード版のボイスやBGMをほぼ完全に再現し、「家庭でゲーセンのゲームができる」という夢をユーザーに見せた。これは後のPlayStationなどへ続く、大容量メディア時代の先駆けといえる出来事だった。
No.2 ストリートファイターII

| 発売日 | 1992年6月10日 |
|---|---|
| 開発 | カプコン |
| 発売 | カプコン |
| 売上本数 | 約287万本 |
| 対応ハード | スーパーファミコン |
| プロデューサー | 岡本吉起 |
【概要】
アーケードで社会現象となった『ストII』のSFC移植版。容量16メガビットという当時最大級のロムカセットを使用し、8人のキャラクター、各ステージの背景、BGMなどを高いレベルで再現した。リュウ、ケンだけでなく、春麗、ガイル、ザンギエフなど個性豊かなキャラクターを選択して対戦できる点が革命的だった。販売本数は国内287万本、世界630万本を記録し、カプコン最大のヒット作(当時)となった。このソフトのためにSFC本体を購入したユーザーも多く、ハードの普及にも大きく貢献した。
【あらすじ】
世界征服を企む悪の秘密結社「シャドルー」の総帥ベガが、世界各国の格闘家たちを集めた格闘大会を開催する。その目的は、優れた格闘家を洗脳し、自らの手駒とすることだった。真の格闘家を目指すリュウ、行方不明の父を探す春麗、親友の敵討ちに燃えるガイルなど、それぞれの思惑を胸に秘めた8人の戦士たちが世界中を転戦する。四天王(バイソン、バルログ、サガット、ベガ)を倒し、最強の座を掴むのは誰か。エンディングではキャラクターごとのその後が描かれ、彼らの人間ドラマも垣間見ることができる。
No.3 ストリートファイターIIターボ

| 発売日 | 1993年7月11日 |
|---|---|
| 開発 | カプコン |
| 発売 | カプコン |
| 売上本数 | 約210万本 |
| 対応ハード | スーパーファミコン |
| プロデューサー | 岡本吉起 |
【概要】
前作『ストII』のマイナーチェンジ版であるアーケードの『ダッシュ』および『ダッシュターボ』の要素を統合して移植した作品。これまでCPU専用だった四天王(バイソン、バルログ、サガット、ベガ)がプレイヤーキャラとして使用可能になり、同キャラ対戦も実現した。さらに、ゲームスピードを高速化できる「ターボ」モードを搭載し、よりスピーディーでエキサイティングな対戦が可能になった。春麗の「気功拳」やブランカの「バーチカルローリング」など、新技も多数追加されている。
【あらすじ】
シャドルーの魔の手は広がり続け、戦いは激化の一途をたどる。かつては立ちはだかる壁だった四天王たちも、それぞれの野望や目的のために動き出した。復讐に燃えるサガット、美学を追求するバルログ、金のために戦うバイソン、そして世界征服を目論むベガ。彼ら自身の手で最強を証明するため、あるいは宿敵を倒すため、新たな戦いのゴングが鳴る。高速化したバトルの中で、一瞬の判断が生死を分ける極限の戦いが展開される。
No.4 スーパーストリートファイターII

| 発売日 | 1994年6月25日 |
|---|---|
| 開発 | カプコン |
| 発売 | カプコン |
| 売上本数 | 約129万本 |
| 対応ハード | スーパーファミコン / メガドライブ |
| プロデューサー | 岡本吉起 |
【概要】
『ストII』シリーズの集大成とも言える作品。容量は32メガビットに倍増し、グラフィックやサウンドが大幅にリニューアルされた。新キャラクターとしてキャミィ、フェイロン、ディージェイ、T.ホークの4名が参戦し、総勢16名となった。連続攻撃でポイントが入るコンボ表示の実装や、新たなゲームモードの追加など、家庭用ならではの要素も充実している。SFC版と同日発売のメガドライブ版も高い完成度を誇った。
【あらすじ】
シャドルーの暗躍に対し、新たな戦士たちが立ち上がる。英国特殊部隊のキャミィ、香港のアクションスターであるフェイロン、ジャマイカのミュージシャン・ディージェイ、そして故郷を奪われたサンダー・ホーク。彼らの参戦により、戦いの舞台はさらに広がりを見せる。キャミィの失われた記憶とベガとの関係、T.ホークの悲しき復讐など、新たなストーリーが既存のキャラクターたちとも交錯し、より深みを増した世界観が描かれる。
第2期:システムの深化と2D格ゲーの熟成(1995-1999)
1990年代中盤、PlayStationとセガサターンが登場し、ゲーム業界は「ポリゴン」による3D表現へと大きく舵を切った。『バーチャファイター』や『鉄拳』が台頭する中、カプコンはあえて2D表現の可能性を追求し続けた。その答えが『ストリートファイターZERO』シリーズである。アニメーションのような滑らかな動き、空中ガードやオリジナルコンボといった新システムの導入、そして若き日のリュウやケンを描くストーリー性は、従来のファンだけでなく、アニメファンなどの新規層をも取り込んだ。
また、世紀末には「究極の2D格闘」を目指した『ストリートファイターIII』シリーズが登場。ドリームキャストなどの高性能ハードで表現された圧倒的なドット絵アニメーションと、相手の攻撃を弾く「ブロッキング」システムは、格闘ゲームを高度な読み合いの競技へと昇華させた。この時期は、2D格闘ゲームがシステム的に成熟し、一つの芸術形式として完成された時代と言える。
No.5 ストリートファイターZERO

| 発売日 | 1995年12月22日 |
|---|---|
| 開発 | カプコン |
| 発売 | カプコン |
| 売上本数 | 約60万本 |
| 対応ハード | PlayStation / セガサターン |
【概要】
『ストII』の前日譚を描く新シリーズとして登場。キャラクターデザインを一新し、アニメ調のポップな絵柄となった。システム面では「スーパーコンボ」に加え、ガードキャンセルが可能な「ZEROカウンター」、空中でガードできる「空中ガード」などが導入され、攻防の駆け引きがよりアグレッシブになった。また、隠しコマンドで『ファイナルファイト』のコーディーやガイ、そしてダンといったユニークなキャラが使用できるのも特徴。
【あらすじ】
リュウがまだ「真の格闘家」としての道を模索していた頃の物語。師・剛拳を倒した男、豪鬼への復讐心と、自らの内に眠る「殺意の波動」に苦悩するリュウ。一方、若き日のケンはリュウとの再戦を望み、春麗は父の行方を追ってシャドルーの影を追う。ナッシュやローズといった新キャラクターも交え、それぞれの運命が交錯する。未熟ゆえの情熱と、若き格闘家たちの葛藤が描かれる青春の章。
No.6 ストリートファイターZERO2

| 発売日 | 1996年8月9日 |
|---|---|
| 開発 | カプコン |
| 発売 | カプコン |
| 売上本数 | 約70万本 |
| 対応ハード | PlayStation / セガサターン / SFC |
【概要】
前作『ZERO』をベースに、キャラクターやシステムを大幅に強化した続編。自分の好きな技を組み合わせて連続攻撃を叩き込む「オリジナルコンボ(オリコン)」システムが初登場し、コンボの自由度が飛躍的に向上した。女子高生ファイター「春日野さくら」がデビューし、リュウを追いかけるという親しみやすい設定で人気を博した。SFC版も発売され、技術的な限界に挑んだ移植として話題となった。
【あらすじ】
リュウに憧れる女子高生・さくらは、彼に会うためにストリートファイトの世界へ飛び込む。一方、リュウは殺意の波動を克服するため、さらなる修行の旅を続けていた。若き日の豪鬼、元(ゲン)、ロレントなど、過去作や『ファイナルファイト』からの参戦キャラも増え、戦いの舞台はさらに広がる。殺意の波動に目覚めたリュウ(殺意リュウ)というifの存在も描かれ、物語はよりシリアスな展開を見せる。
No.7 ストリートファイターZERO3

| 発売日 | 1998年12月23日 |
|---|---|
| 開発 | カプコン |
| 発売 | カプコン |
| 売上本数 | 約40万本 |
| 対応ハード | PlayStation / セガサターン / DC |
【概要】
ZEROシリーズの最終作にして集大成。総勢30名以上のキャラクターが登場し、それぞれに「X-ISM(スパIIX準拠)」「Z-ISM(ZERO準拠)」「V-ISM(オリコン重視)」という3つのスタイルを選択できる「イズムシステム」を搭載。家庭用版独自の「ワールドツアーモード」では、キャラクターを育成しながら世界を巡るRPG的な楽しみ方ができ、長く遊べる作品として高く評価された。かりん、レインボー・ミカなどの人気キャラもここから本格参戦した。
【あらすじ】
シャドルーの総帥ベガは、サイコパワーを増幅させる装置「サイコドライブ」を完成させ、世界征服への最終段階に入っていた。リュウの肉体を新たな器として狙うベガに対し、ナッシュや春麗、そしてガイルたちが総力を挙げて立ち向かう。キャミィらベガ親衛隊(ドールズ)の悲しい運命や、さくらとかりんのライバル関係など、多数のキャラクターによる群像劇がクライマックスを迎える。ベガの野望を打ち砕き、彼らは未来を掴み取れるのか。
第3期:究極の2D格闘と冬の時代(1997-2000)
1990年代末、ゲーム業界はPlayStation 2の足音が聞こえ始め、ドリームキャストが登場するなど、ハードウェアの性能競争が激化していた。アーケードや家庭用市場では『鉄拳3』や『バーチャファイター3』といった3D格闘ゲームが隆盛を極め、ビジュアルの派手さと空間的な駆け引きが主流となりつつあった。そんな中、カプコンはあえて「究極の2D格闘ゲーム」を目指して『ストリートファイターIII』シリーズを世に送り出した。
ドット絵アニメーションの極致とも言える滑らかなキャラクターの動き、そして相手の攻撃をガードではなく前方に入れて弾く「ブロッキング」システムは、格闘ゲームを高度な読み合いの競技へと進化させた。しかし、リュウとケン以外のキャラクターを一新したことや、システムのマニアックさが高すぎたため、ライトユーザーの離脱を招く結果ともなった。格闘ゲームブームが沈静化し、ジャンル自体が先鋭化したマニア向けのものへと変貌していった「冬の時代」の入り口でもある。だが、その完成度は凄まじく、特に最終作『3rd STRIKE』は現在でも最高傑作として愛され続けている。
No.8 ストリートファイターIII W Impact

| 発売日 | 1999年12月16日 |
|---|---|
| 開発 | カプコン |
| 発売 | カプコン |
| 売上本数 | 約15万本 |
| 対応ハード | ドリームキャスト |
【概要】
アーケードで稼働した『ストリートファイターIII -NEW GENERATION-』と、その続編『2nd IMPACT』を1本にまとめたドリームキャスト移植版。主人公をリュウから新キャラクター「アレックス」に交代し、世界観を一新した意欲作。最大の特徴は、レバーを前に倒して攻撃を受け流す「ブロッキング」。成功すればノーダメージで即座に反撃可能となるため、圧倒的な劣勢からの逆転が可能となった。「スーパーアーツ」の選択制など、戦略の幅も広い。
【あらすじ】
新たな主人公アレックスは、ニューヨークに住む若き格闘家。育ての親であるトムが謎の男「ギル」に倒されたことをきっかけに、彼は復讐のために旅立つ。一方、修行の旅を続けるリュウやケンも、新たな世代の強者たちとの戦いに身を投じていた。世界を裏から操ろうとする秘密結社の総統ギル。彼の目的は、理想の世界を創るための「救済」だった。圧倒的な力を持つギルに、アレックスはどう立ち向かうのか。新世代の戦いの幕が開く。
1999年は「ノストラダムスの大予言」で世界が滅亡すると騒がれた世紀末。エンタメ界では宇多田ヒカルがデビューし、携帯電話では「iモード」がサービスを開始してインターネットが手のひらに収まるようになった。『シェンムー』や『シーマン』などドリームキャストの尖った作品が話題を集める一方、格闘ゲームは複雑化により一部の愛好家のものとなりつつあった時期でもある。
No.9 ストリートファイターIII 3rd STRIKE

| 発売日 | 2000年6月29日 |
|---|---|
| 開発 | カプコン |
| 発売 | カプコン |
| 売上本数 | 約10万本 |
| 対応ハード | ドリームキャスト / PS2 |
【概要】
『ストIII』シリーズの完成形にして、2D格闘ゲームの最高峰と謳われる作品。春麗が待望の復活を果たし、その他にもマコト、レミー、Q、トゥエルヴといった個性的な新キャラが追加された。ガード中にブロッキングを出せる「ガードブロッキング」の追加や、ゲームバランスの調整により、対戦ツールとしての完成度が極めて高い。その奥深さゆえに、発売から20年以上経った現在でも世界大会が開かれるほど根強い人気を誇る。
【あらすじ】
ギルが主催する世界格闘技大会。それは単なる力比べではなく、選ばれた人間による理想郷建設のための選別でもあった。アレックスは再びギルを追うが、その旅の中でリュウと出会い、戦いを通じて「強さ」の意味を問い直すことになる。一方、殺意の波動を捨てたリュウ、父の死の真相に近づく春麗など、それぞれの物語も佳境を迎える。Fight for the Future. 未来を掴むための、最後の打撃(3rd STRIKE)が放たれる。
第4期:原点回帰と格ゲー復権(2008-2015)
『3rd STRIKE』以降、カプコンは長らく『ストリートファイター』の新作ナンバリングタイトルを発売しなかった。格闘ゲームのシステムが複雑化しすぎたことで初心者が入り込めなくなり、市場が急速に縮小した「格ゲー暗黒期」である。しかし2008年、その沈黙を破り『ストリートファイターIV』がアーケードで稼働を開始した。
「原点回帰」をテーマに掲げた本作は、グラフィックを3Dモデルにしつつも、操作感覚は2D格闘そのものというスタイルを採用。墨絵のようなタッチのエフェクトや、初心者を救済する「セービングアタック」の導入により、かつて『ストII』で遊んでいた休眠ユーザーを呼び戻すことに成功した。家庭用版ではインターネット対戦機能が標準搭載され、自宅にいながら世界中のプレイヤーと対戦できる環境が整備された。これが「プロゲーマー」という職業を生み出す土壌となり、ウメハラ氏をはじめとするスタープレイヤーの活躍も相まって、格闘ゲームは再びエンターテインメントの表舞台へと返り咲いた。
No.10 ストリートファイターIV

| 発売日 | 2009年2月12日 |
|---|---|
| 開発 | カプコン / ディンプス |
| 発売 | カプコン |
| 売上本数 | 約30万本 |
| 対応ハード | PlayStation 3 / Xbox 360 |
【概要】
約10年ぶりとなるナンバリング最新作。「再始動」をテーマに、ストII時代のキャラクターをメインに据えつつ、新キャラ(アベル、クリムゾン・ヴァイパー等)を加えた構成。グラフィックは3Dだが、ゲーム性は完全な2D格闘となっている。新システム「セービングアタック」は、相手の攻撃を一度耐えてから反撃できるため、防御的な立ち回りが容易になった。また、起死回生の超必殺技「ウルトラコンボ」により、初心者でも一発逆転の爽快感を味わえるようになった。世界中で大ヒットし、格闘ゲームの復権を決定づけた。
【あらすじ】
ベガ率いるシャドルーが壊滅してから数年後。平穏を取り戻したかに見えた世界で、新たな脅威が動き出す。兵器会社「S.I.N.」社が主催する格闘大会。その裏には、ベガの代用ボディとなる優秀な格闘家のデータを収集する目的があった。記憶喪失の青年アベル、CIAエージェントのヴァイパー、そして再び戦いの場へ戻ってきたリュウたち。S.I.N.社のCEOであるセスを倒し、その野望を阻止することができるか。『ストII』と『ストIII』の間を繋ぐ物語。
2008年は日本でiPhone 3Gが発売され、スマートフォンの普及が始まった年である。また、ニコニコ動画やYouTubeといった動画共有サイトが定着し、ゲームのプレイ動画や大会の配信を見る文化が急速に広まった。『ストIV』のヒットは、こうした「動画映え」する演出(ウルトラコンボ時のカメラアングル変化など)と、ネットコミュニティの拡散力に支えられていた側面も大きい。
No.11 スーパーストリートファイターIV

| 発売日 | 2010年4月28日 |
|---|---|
| 開発 | カプコン / ディンプス |
| 発売 | カプコン |
| 売上本数 | 約25万本 |
| 対応ハード | PlayStation 3 / Xbox 360 |
【概要】
『ストIV』の大幅バージョンアップ版。ジュリ、ハカンといった完全新キャラクターに加え、ディージェイ、T.ホーク、ガイ、コーディーなどの過去作人気キャラが多数参戦し、総勢35名となった。ウルトラコンボが2種類から選択可能になり、戦術の幅が広がった。また、オンライン機能が強化され、複数のプレイヤーで観戦しながら対戦できる「エンドレスバトル」や、チーム戦が楽しめる「チームバトル」が実装され、コミュニティの活性化に貢献した。価格も抑えられ、多くのユーザーに受け入れられた。
【あらすじ】
S.I.N.社の暗躍はまだ終わっていなかった。風水エンジンを左目に宿した謎の女性ファイター、ハン・ジュリがライバルたちを襲撃する。彼女の目的は、そしてS.I.N.社の真の狙いとは何か。それぞれの正義や信念、あるいは欲望のために戦う格闘家たち。タージ・マハルやアフリカの大地など、世界各地を舞台にした激闘はさらにヒートアップする。リュウは殺意の波動を乗り越え、真の格闘家への道を歩み続けることができるのか。
第5期:eスポーツの旗手として(2016-現在)
2010年代後半、世界中で「eスポーツ」という言葉が一般化し、ゲームが高額賞金を懸けた競技として認知されるようになった。その中心にいたのが『ストリートファイターV』である。発売当初はコンテンツ不足やサーバーの不安定さが批判されたが、カプコンは長期的な運営方針を掲げ、シーズンごとのキャラクター追加やバランス調整を継続。世界規模の大会ツアー「Capcom Pro Tour」を整備し、プロゲーマーたちが年間を通じてポイントを競い合う仕組みを作り上げた。
そして2023年、『ストリートファイター6』が登場。従来の格闘ゲームの敷居の高さ(コマンド入力の難しさ)を解消するため、ワンボタンで必殺技が出せる「モダン操作」を導入。これにより、格闘ゲームから離れていた層や完全な新規層を一気に取り込むことに成功した。さらに、アバターを作成して世界を冒険する「ワールドツアー」モードの搭載や、ヒップホップカルチャーを取り入れたスタイリッシュなデザインなど、ゲームとしての総合力を高めた本作は、発売から短期間で全世界400万本(2024年時点)を売り上げる大ヒットとなり、シリーズの新時代を築き上げている。
No.12 ストリートファイターV

| 発売日 | 2016年2月18日 |
|---|---|
| 開発 | カプコン / ディンプス |
| 発売 | カプコン |
| 売上本数 | 約15万本 |
| 対応ハード | PlayStation 4 / PC |
【概要】
eスポーツ時代の到来を見据え、PS4とPCのクロスプラットフォーム対戦を実現した意欲作。新システム「Vトリガー」は、キャラクターごとの個性を最大限に引き出す逆転要素として導入された。発売当初はアーケードモード未実装などで批判を浴びたが、度重なる無料アップデートとDLCキャラクターの追加により、最終的には40体以上のキャラクターと充実したコンテンツを持つ作品へと成長した。競技シーンのスタンダードとして6年間にわたり君臨し続けた。
【あらすじ】
壊滅したはずのシャドルーが再び動き出した。彼らは「黒い月(ブラック・ムーン)」計画を発動し、世界を恐怖と混乱に陥れようとしていた。リュウ、春麗、ガイル、そしてナッシュの復活。神月かりん率いるファイターたちは、シャドルーの野望を阻止するために集結する。一方、ベガの力の源であるサイコパワーの秘密や、謎の戦士ネカリの出現など、多くの謎が渦巻く。シネマティックストーリーモード「ゼネラルストーリー」では、これまでのシリーズの伏線が回収され、シャドルーとの最終決戦が壮大なスケールで描かれる。
2016年は「PlayStation VR」などが発売され「VR元年」と呼ばれた。また、海外では既に一般的だったeスポーツが、日本でも言葉として定着し始めた時期である。プロライセンス制度の議論や、高額賞金大会の開催など、ゲームが「遊び」から「職業」へと変化する過渡期において、『ストV』はその中心的な役割を担った。Twitchなどの配信プラットフォームでの大会視聴が日常的なエンタメとして定着したのもこの頃である。
No.13 ストリートファイター6

| 発売日 | 2023年6月2日 |
|---|---|
| 開発 | カプコン |
| 発売 | カプコン |
| 売上本数 | 400万本(世界) |
| 対応ハード | PS5 / PS4 / Xbox Series X|S / PC |
【概要】
シリーズ35周年を記念する最新作。従来の操作(クラシックタイプ)に加え、ワンボタンで必殺技が出せる「モダンタイプ」を搭載し、格闘ゲームの参入障壁を劇的に下げた。一人用モード「ワールドツアー」では、作成したアバターでメトロシティなどのオープンワールドを冒険し、リュウや春麗などのレジェンドキャラクターに弟子入りできる。オンラインハブ「バトルハブ」では、ゲームセンターのような空間で他プレイヤーと交流が可能。グラフィックはRE ENGINEによりフォトリアルかつスタイリッシュに進化し、ストリートカルチャーを意識したデザインが特徴。
【あらすじ】
シャドルー壊滅後の世界。新たな世代の若者たちが、それぞれの「強さ」を求めてストリートへ繰り出す。主人公(プレイヤーのアバター)は、元米軍兵士ルークのジムに入門し、様々な師匠との出会いを通じて成長していく。一方、新興国ナイシャールでは、謎の組織による陰謀が動き出していた。JPと名乗る男の目的とは。伝説の格闘家ケンがテロ事件の首謀者として指名手配されているという衝撃的なニュースも飛び交う中、プレイヤーは自分だけの伝説を刻む旅に出る。
まとめ:拳を交え、分かり合う
『ストリートファイター』シリーズは、単なるゲームの枠を超え、世界中の人々を繋ぐ共通言語となった。「俺より強い奴に会いに行く」というキャッチコピーの通り、プレイヤーたちは画面を通じて見知らぬ誰かと拳を交え、言葉を使わずに会話をしてきた。2Dドット絵の時代から最新の3Dグラフィックに至るまで、その根底にある「対戦の熱量」と「駆け引きの面白さ」は変わらない。
『スト6』で導入されたモダン操作は、格闘ゲームの扉を再び大きく開いた。かつてゲーセンで熱くなった大人たちも、初めて触れる若者たちも、同じ土俵で熱狂できる。このシリーズはこれからも、デジタルな武道として、そして最高のコミュニケーションツールとして、私たちの闘争本能を刺激し続けてくれるだろう。